名無しさん 2024-06-23 15:07:43 |
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はい、僕達も負けませ───
( 僕の提案に笑い出した彼は、どこか気持ちが軽くなったような表情で言葉を返す。それにひどく安心して、こちらもつられて笑いながら言い返そうとした、その瞬間。彼の両手が伸びてきて、僕の頭をロックオンしたかと思えば、「えっ」と声を出す間もなく髪の毛を撫で回されてしまった。人に頭を撫でられるなんて大人になってからあっただろうか。メンバー同士の距離感バグが発生しがちなうちのグループでも、さすがに頭を撫で合うことはない。唐突に身体的距離を縮められて、耳元で響くくしゃくしゃと髪が擦れる音と手の温もりが非現実的に思えて、どうしたらいいか分からずされるがまま。そして、ふと向けられた笑顔が、今まで見たことのない顔をしていたものだから、つい )
……! か、かわっ……
( 思わず声が漏れたが、この言葉は伝わってはいけないと瞬間的に判断して口を閉じた。……かわいい、と思った。尊敬する歳上の彼に、ほんの数秒目を奪われた。なにしろ彼は顔が良い。そりゃ芸能人はみんな揃って綺麗な顔をしているが、彼は芸人さんでありながらもとても顔が整っている。隠れ顔ファンも多くて、あまり漫才は見たことないけど顔は好きーという人も多い(僕はそんな人を見るたび漫才も見てほしいと強く願う)その顔に、あんなふうな笑顔を向けられたら、一瞬おかしな思考がよぎっても僕を咎める余地はないだろう。こんな姿を見せられちゃしょうがない、不可抗力だ。───心の中でつらつらと言い訳がましく言葉を並べていても、顔の熱はおさまらない。彼の複雑な想いを知って、適切な距離をとりながら寄り添いたいと思う反面、胸の奥に仕舞い込んでいる感情が早く気づけと心臓を叩いてくる。しかし、せっかく打ち解けてくれたんだ。彼を困らせてしまう感情は包み隠すしかない。彼の手が離れると、ぶるぶると首を振って余計な邪念を振り落とし「そろそろ食べますか」と顔を熱らせたまま、少し冷めたカルボナーラを一口 )
ん、美味しい。……なんというか、クリーミーで、美味しいです。……あーダメだ、全然うまく食レポできないなぁ。ユキさん、お手本見せてくれませんか!
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