アスティ 2024-06-05 12:58:40 |
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だよな…
(目の前の異常な光景に不穏な何かを感じ、近づこうとは思えず。なのにその朽ちた入り口から目を背けられず、駱駝から降り地に足をつけそこを見遣ると、薄暗い入り口に佇む人影に気付いて。それが昼間泉で会話した盗賊だと認識したとき、彼の近くに小さな子供のような人影が揺れて。こちらをちらり、振り向いた白い顔には目も鼻もなく、あるのは赤黒い口のみ。その口が大きく開かれると、盗賊の喉笛を食いちぎり身体をこちらに向けて)
…っ!
(目のない顔に見つめられ身体が動かず呼吸がおぼつかない。歩み寄る白い影。刀を取れ──白い影が歪み、長い黒髪と懐かしい面影を形作って──アスティに知らせろ──ヒタヒタと眼前に迫る。口元に浮かべた優しい笑み、夢でしか触れられない白い手指が、あと少しで頬に触れる)
いてっ!!
(唐突な衝撃、眼前に星が飛ぶ。何事かと身体を起こすと、そこには主人に体当たりを食らわせ、スンっと横を向く駱駝の姿。我に返ってすぐ視界に飛び込んだのは、湖に引きずり込まれるように沈んでいく神殿と、倒れた男。そこにへばりつくような白い人影が、確かに二人を名残惜しそうに見つめていたのを感じて)
……死んだ妹が見えたんだ。
得体の知れない何かが、世界にはいくらでもあるのかもしれねぇな…。すまねぇな、もう大丈夫だ、旅を続けるとしようか。
(神殿を飲み込み遠ざかる湖。唖然とそれを眺めるも、日中、砂漠の洗礼で見た視界から消えた大きな水溜り、そして砂漠の人喰いの話を思い出して。死者への未練が巣食う魂を喰らうのだろうか、そんな怪談めいた考えを相方にぽつりと話すも、その気味の悪い正体を追う気は微塵もなく。ようやく立ち上がると、駱駝と無言の挨拶を交わしその背中に乗って)
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