伏見静 2024-05-20 07:55:48 |
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(伏見が資料室の、皮脂やら何やらで妙にベタつくドアノブに手を掛けた時─背後から響く貴方の声に軽く瞬きをした。─この男、本当に今までの"バディ"とは何もかもが違う─少なくとも、人事異動が来なかったとしても元々この部署に居たのではないか、と思わせる程には。くつくつ、と肩を揺らして自虐的に笑った後、投げ掛けられた問いにはいつものように、素っ気ない返事だけを返した。「…そうですねえ…アイスコーヒーで。」それだけ言い残し、資料室を出て─大和川の待つオフィスへと向かう。半開きのドアの隙間から痩せた身体を滑り込ませれば、先程と同じように中央のデスクで両手を組んでいる大和川と視線が噛み合った。彼女が穏やかに微笑んで口を開くたび、右頬に残る大きな火傷の跡が引き攣れて歪に歪む。「やあ、お帰り…伏見。大狼くんは置いてきたのかい?」伏見も当事者でないとは言え何かしら思うところが有るのか─その傷跡を直視することは無く、彼女の額の辺りをぼんやりと見つめながら答えた。「…ええ、まあ…子供じゃあるまいし、場所さえ分かれば戻っては来れるでしょうからねえ。」相変わらずだな、と笑う大和川を余所に伏見はデスクへと戻り、傍に立て掛けていた刀を何気無く手に取る。カタン、と柄と鞘が擦れ合う微かな音を鳴らし、手に取られた刃は─カタカタと震えるように揺れた。伏見は心做しか普段よりも冷たい瞳でその様子を眺めた後─「…死なない、なんて…前"と同じことを言う。」ぼそり、そう呟いては刃を元の位置へ戻し、膝を組みながらぼんやりと虚空を見つめて)
(喜んで頂けたようで良かったです…!)
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