伏見静 2024-05-20 07:55:48 |
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(─人を助けて感謝された記憶など、数える程しかなかった。伏見は貴方からの礼を静かな瞬きで受け流し、様子を一瞥した後─問題無しと判断したのか、自身のデスクの椅子を音もなく引き、そこにすとんと腰を下ろす。貴方の言葉に釣られるように、自身の日本刀に目を落とした伏見は─座った拍子に起きる風で瞼に掛かる黒髪がふわりと揺れたのを、鬱陶しそうに指先で払い除けつつ─中央のデスクで片肘をついたまま作業をする大和川の方へ顔を向け、呆れたような声を上げた。「……はあ…大和川警視。大狼巡査に説明、してないんですかあ?」が、当の大和川は伏見のじとりとした目線や声色など何処吹く風─先程貴方を出迎えたのと同じように、人当たりの良い明朗な笑顔を浮かべながら軽く謝罪してみせる。「いや、わざとじゃないんだ…すまないね。彼─大狼くんの異動が随分いきなりだったものでね…ちょっと待っていたまえ。」アレは何処にしまったかな、などと呑気な声を上げながらデスクの下を探る大和川の様子を横目に、伏見はくあ─と小さな欠伸を一つ。じとりとした目線を貴方の方に向けつつ、「……ちょっと待ってくださいねえ…大和川警視が武器を出してくれる筈なので。」半ば当て擦りのような声色で、大和川を遠回しに非難した。─程無くして、目当てのものを見つけたらしい大和川が何やら重そうな段ボールを両手で抱えて伏見と貴方の元へ歩み寄ってくる。「いやあ、待たせてすまない。ほら、この中から好きなものを選ぶといい。」彼女が開いた段ボールの中には赤い柄をした大振りな手斧、仕込み杖と思われるシンプルなデザインの杖─といった物品に混じり、五色の布が揺れる神楽鈴、陰陽道のものと思われる護符、若干錆びた錫杖─など、あまり役立ちそうに無い品も一緒くたに詰め込まれていた。退屈そうな様子の伏見はちらりとその段ボールに目線を投げ、「…また増えたんですかあ?…随分資金に余裕があるんですねえ。」と目を細める。大和川はははっ、と乾いた笑い声を上げ、貴方に向き直って「さあて、好みの品はあるかい?」と微笑んでみせ)
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