伏見静 2024-05-20 07:55:48 |
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(揚げ足取りをさして気にした風もなく、貴方の言葉を聞き流し。虚空を見やって得心がいったような貴方の様子に、流石にこういった事柄には慣れているかと安心する。肩の力を抜いて動きを目で追っていると、不意に視界に飛び込んできた日本刀に目を丸くして。何故こんな物が──浮かんだ疑問は抜かれた刀身の輝きに焦りへと変わり、その切っ先が向けられると蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる。目を見開いたまま固まり、真っ白になりかけた思考に首を傾げた彼の言葉が染み込んだ。オーバーキル──?焦りと動揺の最中でなんとかその意味を理解しようと、止まりかけた頭が鈍く回転する。彼の動きを一切止めなかった大和川さん、自分を見ていない伏見警部補、まるで何かに抵抗するように頻繁に耳に届きだした空気の鳴る音──部署名と併せて繋ぎ合わせれば状況の把握は容易だっただろうが、刃物、それも日本刀を向けられるという人生で初めての出来事の前では、そこまで思考が及ばず──しかし貴方の動くなという指令に殆ど直感的に従った方が良いと感じ。「わか、った」干上がったように渇いた喉から絞り出すように了解の言葉を吐き出し、固唾を飲む。何をしようとしているのかを察したわけではないが、ただ貴方を信じようと覚悟のこもった目を向けて)
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