透徹

「　　明るく前へ。花のように陽のように！　　」

『　　大事な人と好きなものでいっぱいで、今は悠々と羽を広げられたんだ　　』

「　　押しては引いて寄せては返す波の中で翼をひろげる　　」

「　　ばたばたと羽音を立てながら遠く飛び立つ日に備えて　　」

「　　玉になった糸に触れずとも案じてくれる心遣いに何度も安らいだ　　」

「　　私がどうしたいのか　　」

『　　ねぇリグレット。僕を攫ってはくれないか　　』

（ 空に浮かぶ月を抱き締めた。優しく、淡く、わたしを照らす青ときんいろの満月。月は妙に温もって、ゆるりとゆるりと手のひらをくっ付けては別の面に触れる仕草を繰り返す。離れがたい温度が傍にある。それだけで、さらりと心は軽やかに、心地の良い眠りへ誘われた ）

「　　おかえりと、ただいまと、君のカンテラ　　」

『　　どうしたって快晴に恋をしてしまうんだ　　』

『　　ああ、なんか。ふふ、って顔が綻ぶのは久しぶりかも　　』

『　　あの曲と、旅先の思い出と。あなたと君のおかげ、かな　　』

『　　──優しいゆめ。まだ、どうか、もう少しだけ続いていて　　』

「　　もう少しだけ、待ってて　　」

「　　空はまだ明るいね　　」

『　　いいんだよ。頑張って笑わなくても。　　』

『　　僕が思っていた以上に、僕はまだこの世界の景色が好きみたい　　』

「　　困ったね。寝付けないや　　」

『　　今日はきっと良い日になるね　　』

「　　リグレット。君は今、笑えている？　　」