狐の面 2022-06-16 12:41:30 |
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(相手が盃に口を寄せたのを見てそれが終わるのを待てばそれを受け取り入っていた神酒を一気に呷り喉の奥が焼けるような感覚と五臓六腑に染み渡る神酒の力に口元が緩み。盃を交わした事で夫婦になった訳で周りからは歓声にも近いそれが挙がるがそれはこの後の宴に対したものか、少しだけ目元を細めつつ盃を隅へと放り投げては周りの人間はぞろぞろと宴の行われる大広間へと行くためか姿を消していき。使用人達も食事や酒の用意等で慌ただしくなるため皆出払って行ってしまえば残されたのは相手との2人だけ。途中聞こえていた、膝の上に乗っていていいのかと質問にそう言えばと相手へと視線を下ろし。白無垢、とは言えないが菖蒲を咲かせる瞳と同じその和服はとても似合っていて、まだ齢が十だとは思えない程。だがまだあどけなさの残る顔は年相応か、小さな口から紡がれる言葉は年相応とはあまり思えないものではあるが。ひとつ笑みを浮かべては相手の頭の被り物を取ってやり)
構わん。それにただ“盃を交わすだけの儀”だ──これで私とお前は夫婦だ。よろしく頼むよ。
(ああ堅苦しいと言わんばかりに相手を膝から下ろしてやればこの着ている狩衣が酷く暑苦しくて嫌気がさす。適当に肌蹴させると、だらしなく体勢を崩して肘置きに肘を置いて扇子片手に顔を扇ぎながら呟くと鋭い犬歯を覗かせながら笑みを浮かべ。「これから先、お前はこの屋敷で暮らす。夫婦になってもお前はまだ赤子同然──部屋もちろん与えられているし、専任の女中も付く。都心の方にも出掛けられるし、欲しい物は何でも言えば手に入る。何か困った事があれば私の名前を出せ……嗚呼、私は“御言”と呼ばれている」パチンッ!と力強く扇子を閉じると相手を指差すように相手へ向けてつらつらと言葉を紡ぎ)
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