狐の面 2022-06-16 12:41:30 |
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(支度が出来た姿をお狐様は勿論周りの人間皆が見ようとこちらを向けば、いくら幼いとはいえその視線に混じる、妬みや羨ましいといった感情は見て取れ、このお狐様の嫁に選ばれるのはこの家にとって特別とは聞いていたが、もしかしたら、その嫁を輩出した家の者、引いては両親はその代に置いて嫁にと選ばれた事による特別措置や権限なんかをもたらされていたのかもと思えば、巫家の血なんて全く引いていない赤の他人の娘で年端も行かぬ娘となれば、面白くもないだろう。ならば自分達の血族から娘を嫁にすれば良かったのにと思いはするが出来るものならしている筈、それが出来ずにわざわざ孤児院から自分を引き取った位なのだから、巫家から女児は産まれず、男子のみしか産まれなかったのだと容易に想像出来る。出来はするがその悔しさなんかをこちらに向けるのはお門違いでは無かろうかと心の中ではその視線の煩わしさと憤りを感じており。そうこうしていればあのお狐様が自分を抱え先程まで座っていた上座へと戻り、膝に座らせる形で自分も座らせられる、発せられた言葉と先程の言葉を聞けば)
――――ありがとうございます。
では、そのように
(飲むふりで良いと言われれば、お神酒と言うことは酒であり、まだ肝臓機能なんかが上手く働かない今の歳では飲めないため、飲むふりでいいと言われれば少しほっとし、差し出されたその盃に手を添えれば口を付け飲むふりをする。先程の言葉といい、このお狐様は悪いお狐様では無いようには感じるし比較的穏やかな性格なのも人で騒がしいのもあまり好きではない事が分かる、だが狐と言うのは日本古来より化かすのが上手いと聞く、狐に化かされた。狐につままれたようだ。なんて言葉があるくらいなのだ、まだ警戒は解けないし今後を考えれば緊張もする。そんな事を考えながら盃から口を離せば、とりあえず盃の酌み交わしは終わったが、座る位置はここで良いのだろうか、無礼になるのでは?と考えれば、せめて相手の斜め後ろあたりに居た方が良いかなと思い、少しだけ後ろを振り返って誰も居ないか確認し)
……私はここで座っていて良いのでしょうか?
せめて後ろに座った方が良いのでしょうか
(こうした和式の結婚での作法なんてあまりよく知らないし、知っていたとしても今回は普通の式とは違い、人外で妖狐もしくは神狐とも言える存在との結婚式なのだ、失礼があっては良くない。せめて必要最低限の事は聞いても問題無いだろうと上記を問いかけ)
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