匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( 相手から得た言質にほとんど開いていない目をもにょもにょと瞬かせると、立ち上がる相手を強く止めもしないが裾を離すこともないまま、戸締りをするギデオンの背後をハルピュイアの雛の様についていく。寝台に入り込むギデオンに安心したのか、再び小さく欠伸をすればやっとその手を放し。約束通り左側のスペースに潜り込み、即柔らかな枕に顔をうずめると、スイッチが切れたかのようにピクリとも動かなくなっていたから、ギデオンの涙ぐましい工作には反応することはなく。それでも相手に声をかけられれば、必死に脳に酸素を取り込む音をさせてから、健気に絞り出した返事は明らかに寝入る寸前の物で。聞くものの眠気まで誘うような規則正しい寝息を立て始める寸前、やけに暖かくはっきりと呼んだのは何百回も繰り返してきた相手の名で。 )
──あい、みなさんと、久しぶりに、会えるの……たのしみ、です……ね。……おやすみなさい、ギデオンさん。
( それは100年寝ていたような、かと思えば意識を失った次の瞬間には目覚めたような、不思議な感覚と軽い体の調子から、質の良い睡眠がとれたことを感じながらの起床で。寝汚いのは酒が入っていなくても変わらない。まだ若い体には朝は辛いもの。かすかな小鳥の声と、うっすら開けた瞼から差し込んだ光の色を見るに、もう少し寝ていてもかまわないだろうと瞼を閉じれば、グランポートの気候になれつつあった体にうっすらと肌寒さを感じて。太陽の匂いがするデュヴェイをきつく巻き込もうとすると、半身程先に何か温かい物があるようだ。夢うつつの脳みそが出した答えは、知らない土地の初めて泊まった宿にあるわけもない、キングストンの自室に十数年、ビビの安眠を見守り続けた不死鳥を名乗るには間抜け顔のぬいぐるみ。その温もりにすり寄り額をこすりつければ、その非常に安心できる香りに再び健やかな寝息を立て始めるだろう。 )
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