匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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……そうですね、お願いしてみましょう
( 軟膏越しに触れた傷口は、想像以上に魔素の再生が早い。気丈な返事をするギデオンの体の、嫌な強ばりが解れるのを見逃さず、無言で患部を労わるようにそっと手の体温で傷口を温めて。薬は滲みなくてもこれでは普段が辛いだろう、キングストンに帰ったら診察の頻度について魔法医に相談すべきか──兎に角、今そのことを患者に話して無駄に不安にさせるのは得策では無いと判断すれば、いつも通りの明るい表情を意識して浮かべ。身体の向きを変えたギデオンへの返事が少し遅れたのは、船から部屋までずっと同行していたにも関わらず、ビビの知らない情報を依頼中でなくともきちんと収集しているギデオンに驚いたためだ。素直な尊敬の滲む視線をギデオンに向けて、自分も相手の役に立ちたいという気持ちの湧き上がるままに、新鮮な気持ちで羊皮紙に目を向ける。軟膏で汚れた手で触れる訳にもいかずに上半身を乗り出せば、ギデオンの背中に一瞬柔らかいものを押し付けたのも無意識で。生まれも育ちもキングストンのビビには、あまり馴染みの無い魔物や話達に強く興味を惹かれるが、此方が乗り出す直前、欠伸を噛み殺したギデオンを思い出せば、その人間味に少し安心して小さく笑い、頼もしいはずのギデオンを甘やかしたくなる衝動は、どうやらこの時点で既に生まれていたらしい。もう片方の脚も浮かせて、完全に寝台に乗りあげれば、モゾモゾと正座の姿勢をとって相手の左肩をつつく。膝枕での治療は、同性の冒険者たちから、よく眠れると非常に評判が良い。『魔法も気持ちいいけど、枕の弾力が最高なんだよ。頼むから絶対痩せないでくれ』と腹に顔を埋めた女剣士のカトリーヌに言われた際は流石に複雑だったが、ギデオンが癒されるなら自分の贅肉も本望だろう。相手が振り返るのを待って、どうぞ、とばかりに両手を広げれば、小さく首を傾げて。 )
──アハハッ、あと魔素取り除くだけなので寝ちゃってもいいですよ
体制変えましょうか
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