匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( あ、また固まっちゃった。確かにギデオンにとって戦況はこの2ヶ月の中でも最悪に厳しいかもしれないが、流石に処理落ちしすぎじゃなかろうか。やっぱり疲れてるんだなあと心底同情しながら、診察に向けて邪魔な腕を捲って。その間に復活し、それでも言葉を紡げずに沈黙するギデオンを鑑みれば、納得したような生暖かい視線と微笑みを浮かべ。ああ、男の子は好きよね──と、縫製のラインが余って落ちた自身の肩を見つめると、相手にも正攻法(と言うにはあまりに邪道だが)の誘惑が効きそうなことには一先ず安心した。それなら矢張り早く元気になってもらわなくては。此方は別に相手を都度フリーズさせたい訳ではないし、寧ろ辛抱堪らなくなっていただかないと困るのだ。そのためにも今晩は早く寝かせてあげようと、思惑はさっぱり違えども、計らずも2人の意向が一致して。「わぁ、急に来たのに優しい!終わったらいただきます」と早速自身の陣地に向き直った背後で、自分のより重く響いたそれが、やけに大きく聞こえた。サラマンダーの尾やマンドラゴラから抽出した軟膏を片手に振り返れば、寝台に腰を下ろしたギデオンが目に入る。その倒錯的な光景に押し倒すどころか腰が引ける辺りが、お嬢さん育ちといったところ。何か小さな拍子で今にも限界を迎え、逃げ出したくなってしまいそうな脚に内心喝を入れ、狭い室内では殆ど無かった距離を半歩詰めれば。密室で2人きり、患部を見るためとはいえ、寝台に座ったギデオンを脱がせて、その肌に触れるなんて──なんか、そんなの、駄目じゃない?相手から数周遅れの危機感に、そろそろ冷めつつあった顔色をぼぼぼっと赤に戻して深呼吸を。ただの治療行為に何を考えているんだ、男の上半身など幾らでも見てきたじゃないかと唾を飲み込もうとするも、口がカラカラに乾いて叶わない。彫りの深い甘く垂れた目元、高い鼻、経験豊かな年季を感じさせる顔立ちにかかる影が、燭台のせいでいつもよりしっとりと濃く見えて、何か見てはいけないものを見てしまった気がして思わず視線を逸らす。先程までの余裕はどこへやら、心臓はバクバクと主張し、ギデオンの顔を真っ直ぐみることすら出来ない。それでもヒーラーとして腹を括れば、ベッドの上に片膝を乗せ乗り出すも、先程もたてたはずの寝台が軋む短い音が、やけにいたたまれなくて、顔を真っ赤にしたまま、傷口の魔素を診るために、無言でシャツの上からそっと手を患部に這わせる。自分にはない筋肉の隆起にさえ動揺し、泣きそうな気持ちになりながら意識を集中させれば、良くも悪くも想像通りの残留魔素量に小さく息を吐き。患部の確認を済ませ、ふと顔を上げた瞬間、やっとその距離の近さに気がいてしまえば、他意の無い自分の指示さえ意味深に聞こえるようで、掠れてきていく語尾が余計その空気を悪化させ。 )
──……シャツ、自分で脱いでください、
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