店主 2022-05-05 19:23:53 |
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「 …よし、気合いをいれて用意しなくては
__ぁ、 」
表の看板をくるりと翻し“OPEN ”の字が大きく正面へ映る。明るく高揚する気持ちを鼻歌で示せば、店内へと戻り、箒を片手に意気込むように上記を述べる。
町外れに小さく構えたこの店もいよいよ開店の日を迎え、少しの塵も残さまいと、お客が来るまでの間も掃除に徹するようで。
しかし、箒を手にし、振り向きざまにカウンターへ置いていた花瓶を落としてしまったのだから、掃き掃除以前に、まずは花瓶の破片拾いといったところか。
「 ふぅ、やっと終わった。
……、お客さん、来てくれるでしょうか。 」
花瓶の破片を一つ一つ拾い集め、取り残しがないように丁寧に掃けば、ついでに周囲の掃き掃除も終え、ため息混じりに肩を落とした。
花もまた買ってこなければ、なんてぼんやりと考えていると、ふと、耳に届く雨音に視線を窓の外へ向ける。
先程まで雨の気配なんてしていなかったのに、今やどんよりと薄暗い空から雨粒が窓を叩いている。
一間して、再度「あ」と小さく声を漏らせば、慌てて店先へと出ていき、表に出していたメニュー板を雨宿りさせようと引きずっていく。
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