匿名さん 2022-05-05 14:12:04 |
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( 叫び声や怒鳴り声は嫌いだ。だからいつも、成る可く静かに終わらせる。人というのは実際に凶器を目にした時、それはそれは嘘のように静かになるものだ。目を見開いて、先程までの威勢も殺し怯えたように此方を見上げる。
その光景は慣れたもので、この男もそうだった。その隙を突いて身体を押え付けることは造作もなく、滅多刺しにする必要も無い。ただ、急所を狙って刃を滑らせれば良いだけ。急所の場所も刃の扱いも全て熟知しているが故に、呆気なく、一瞬で終わってしまう、自分にとっては簡単な仕事だ。
流れる血液や冷たくなる皮膚の感触にさえ、最早何も感じないのに…優しく名を呼ばれるだけで胸が痛くなるのには、当分、慣れそうもない。)
………、い、くみ。
( 近付いてきた気配に気付き、刃を向けた先には、此方を見つめる友人の顔があった。通りゆく車のライトが反射する中、血の滴る刃を握り、横たわる男の傍に立つ自分は、相手にどのように映っているのだろうか。
咄嗟に慣れた手つきでナイフの血を薙ぎ払い仕舞えば、持ってきたリュックにそのナイフや付けていた手袋を仕舞い込み、靴を履き替える。本当は今すぐにでも逃げ出したいが、その為に仕事を疎かにする訳には行かない。バレてしまった以上、自分も、彼も、立場が危うくなってしまう。)
……帰ろう。
( きっと、彼は言いたいこと、聞きたいことは沢山あると思う。それでも、横たわる男の傍にリュックを投げ捨てれば、視線を逸らし、低く呟いたまま、相手の傍を通り過ぎて行く。
暗殺は一人でやっている訳では無い、情報を集める者、準備を整える者、実行する者、後処理をする者、全員が迅速に連携して行われる。このままこの場にいては処理班がやって来てしまうだろう。 )
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