匿名さん 2022-04-24 11:11:17 |
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(憎悪、敵意、加虐心。それらだけで満たされた身体は敵を殲滅する行為に溺れ、陰惨を極め尽くす。死に物狂いの激しい抵抗に遭おうが関係はない。死の危機に瀕した敵がそれまで錬成したことのなかったような巨大注射器を造りだし左目をぶち抜いてこようが、腹に生やした剣山をうねらせて腸を引きずしにかかろうが、毒が回りはじめた己の口の端からどろどろと吐血しようが、それらは徹底的にやり抜くと決めた私刑を止める理由にはならない──否、止めてはいけないのだ。しかしその覚悟が遮られたのは突然のこと。気づけば、痛みもないのに縛りつける太い銀糸が己のあちこちに絡みつき、身動きが取れなくなっていた。ギ、ギ、と足掻いたのち、荒い息と血の泡を吹き零しながら振り返って糸の出先を睨みつける。そこには細い両腕をこちらに構えた女。……誰だったかは思い出せない。だがその苦しそうな、必死そうな表情には見覚えがあり、頭のどこかが苛立ちに煮え立つ感覚がデジャヴを伴って噴き上がる。──何故お前はまたそんな顔をする。そんなものは要らない、情など要らない、ただ破壊だけが自分のすべてだ、邪魔をするな。そんな激情を言葉として発することも無く、既にほとんど事切れた注射の悪魔の肉塊の上で唸り声を上げ、糸から逃れ出ようと激しく身を捩って激怒。だが彼女の決意の固さをそのまま乗せたような糸はびくともせず、いっそ焼き切ろうと発した炎も夢の粒子にはまるで歯が立たない。それでも尚壊し足りないとばかりに、最早手当たり次第に炎を乱発し店の中に小火を出したが、やがて失血により体力が尽きたのだろう、彼女の薄い唇に血が滲んでしまう頃には異形の部位が泥のように溶けはじめ、後にはスーツ姿からウィザードフードジャケット姿に変わった、血まみれの項垂れる男が残り)
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