真夜中の車掌さん 2019-06-29 06:07:22 |
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>車掌さん
あ、ひょっとして家庭の事情……
(職業柄てっきり子供の頃の夢だった、という様なことだと思っていたのでまさかの男からの回答に申し訳なさそうに口ごもり)
>車掌さん
「ふふ、よかった。
……そろそろ発車の時間かな? 時刻表はなかったみたいだけれど……それに、他のお客さんも」
(ひとりでぽつんと座っている状況に今になってほんの少し違和感を覚え、窓越しに人影を探し)
>車掌さん
え、孤独?車掌さんはお友達いないんですか?
(興味深い情報だと慌てた様子で立ち上がって、男にタタタッと近付いていって)
>根来様
「………何か問題でも?お客様。この先
揺れますので、お席にお座り願います」
美しい車掌は冷淡に言い放つ。
詮索するな、とでも言わんばかりに
貴女を睨んで。
>鶴橋様
「………発車は僕の気分次第だし…この列車に
乗れるのは、一人だけ」
青年は溜め息を吐く。
「…この世に、本当に絶望した人だけ」
>車掌さん
……すみません。
(図星だったのかなとすごすごと席に戻りながら小さくため息をつき、揺れると聞いたので深く席につき)
>車掌さん
(再び聞こえてきた『絶望』の言葉に今度はぴく、と指先を反応させる。
ゆっくり窓の近くから離れると、やんわり目を細め)
「はぐらかしても分かってたのね? 意地悪。結構前向きにぼんやり生きてる人間『らしく』振る舞ってたつもりなのになあ。わたしのこと、絶望してる人間に見える?」
>根来様
「………………」
>鶴橋様
「………分かってた訳じゃないよ。
……ただ、僕と同じ気配が漂ってただけ」
青年はぼそりと呟く。
>車掌さん
「うーん、似てるのかな? わたしとルイくん。
結構自信あったんだよ、よく悩みがなさそうって言われるから。その方が人に構ってもらえるの。わたし、一人は嫌だからね」
(機嫌の良さそうな声色で言いながらにこ、っと明るい笑顔を向けるが、先程とは違いふわふわした受け答えではなく自分の意思をチラつかせるような物言いで話し)
>車掌さん
「……本当に強い人間なら一人になる事に怯えたりしないよ。
人間って何考えてるか分からないのに、すがるものが人間しかいないの。わたしを嫌いなのか好きなのか、どうしたら好きになってくれるかとか、何をすればそばに居てわたしを見てくれるかどんなに考えても分からないし信じられない。
それでも人に頼るしかないの。ふふふ、疲れちゃうよねえ」
(思い出を語るようにゆっくりと、自身が抱える思考を口に出すが、依然として表情は笑みを作ったままでどこか歪さを滲み出しており)
>車掌さん
あ、あの、車掌さん。今気付いたんですけど、他のお客さんっていないんですか?
(席に着いたもののやはり暇だったのか再びキョロキョロ辺りを見回すと乗客が自分一人であることに気が付いて、先程の事もあり遠慮がちに声をかけて)
>根来様
(大丈夫ですよ)
「……………客はお前一人だ。……乗れるのは
この世に、本当に絶望した人間だけだ」
美しい車掌は振り向きもせず吐き捨てる。
>鶴橋様
「………ふぅん……人間って、大変なんだね。
嫌なら、煩わしいなら、面倒くさいなら、
きっぱりやめればいいのに」
美しい青年は言い放つ。
そう言ってしまう所が、彼は人間ではないのを
浮き彫りにさせているようだった。
>車掌さん
「……それがね、できないの。弱い人間だからかな。
やめると『一人』になってしまうっていうのが怖くて、どんなに嫌でも人の傍から離れられない。
自分を偽って嘘をついてでも人に好かれていたい、そうすれば少なくとも『ひとり』にはならないからね」
(僅かに目を細めた表情に憂いのような感情が浮かび、先程よりも落ち着いたトーンで口を開き)
「だからわたしは『わたし』っていう嘘をつく事にしたの。
面白いくらい周りは何も変わらなかったよ。みんな可もなく不可もなく、わたしのそばに居てくれる。
でもねえ、満たされないの。不思議。これが『絶望』なのかな」
>車掌さん
「……人間らしく生きることは疲れるよね。もしかしてわたしがここに来たのは潮時だったのかな。
どうして、わたしはここに来たんだろう。わたし、今から行く世界で何を見ればいいの?」
(再びにこ、と暗い気配のない明るい笑みを見せころころと表情を変えていく。
……が、ふと自分が手にしていた切符を取り出すと手の中でくるくると遊ばせ始め)
(/根来美幸の背後です。申し訳ございませんが、リアルで多忙なのと、体調面の問題でここに来られませんでした。まだ、もうしばらくかかりそうなのでこちらの方はやめさせていただきます。今まで本当にありがとうございました。)
ごめんなさい、車掌さん。途中下車します……どうかお元気で(ぺこり)
>根来様
(こちらこそ、ありがとうございました。)
「…………また、絶望したなら乗れ」
列車は陰気な音色と共に、走り去った。
>鶴橋様
(遅れて大変申し訳ありません)
「………さあ。…僕の海底世界は、心を映す。
何を見るかは、君次第だよ」
青年の吸い込まれそうなほど深い青色の瞳が
貴女を見る。
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