狂ったお茶会 ─ 〆

チェシャ猫、今何処に居るの？姿が見えなくなって5日位経ったかしら。一応上げてみるわね。でも急ぐ必要はないわ。これはチェシャ猫が見落としていたら…って思っての事だから。ふふ、猫は気紛れな生き物って事、知ってるわよ。

美味しいお茶とお菓子用意しておくから、気が向いたらいらっしゃいね。

これを、最後の上げとするわね。あんまりにもしつこくしてチェシャ猫に嫌われちゃうの嫌だもの。

もし何かあるのなら、一言頂戴。
アタシには心が無いなんて思わないでね。寂しいさだって感じるし悲しむ事だってあるのよ。それじゃあ、また貴方に会える事を願って少しだけ待ってみるわ。

帽子屋、まずは謝らせてほしい。
お前に愛想が尽きたとか全然そんなんじゃなくって、ただただ忙しかったなあんて言い訳にもなんねェんだけど。ほんとに、ゴメン。今日まで顔出しに来れなかったってのに、こんなに帽子屋が待っててくれて俺ちゃんちょっと血の気が引いちゃった。それはお前の愛情に寒気がしただとかそんなんじゃあなくって、自分がどんだけ帽子屋の優しさに漬け込んでたんだろってサ。何回謝っても足んないだろうけど、もしまだチャンスがあるなら俺ちゃんにお相手の権利をくれたら嬉しいなァ…。

それでも、愛想が尽きてたり、こんなちゃらんぽらんが嫌ってんなら潔く身ィ引くから。そんでお前の幸せ願ってる。ここまでの文章驕ってないかね、偉そげだったりしない？…帽子屋に話し掛けるのが怖いのなんて初めてだ。ほんとにごめん、悪かった。

＿＿暑かったでしょ。冷たいアイスティーでも飲んで一先ず落ち着きなさい。…って落ち着いてないのはアタシの方ね。

チェシャ猫にはチェシャ猫の事情があって、忙しいのにたくさん上げてしまって此方こそごめんなさいね。でもこうしてまた会えた事、本当に本当に嬉しいわ。アタシのプロフィールを見せた後だったからチェシャ猫の好みじゃなかったかなって少し不安だったの。でもその言葉を信じるわ。だからもう謝らないで、またお話しましょ。＿＿今度は忙しくなって居なくなる時はちゃーんと教えてね。アタシを不安にさせないで、チェシャ猫。

＿＿ん、貰う。実は帽子屋から紅茶淹れて貰うのって初めてじゃなあい？はっ、こんな時でも、嬉しくなるモンだねェ。

好みじゃない訳ないだろ？言ったじゃん、お前のふわふわの髪触りたいってサ。でも、不安にさせたのは悪ィと思ってる。俺ちゃんってば可ァ愛い可愛い帽子屋を一人にした挙句不安にさせるって…はァ我が事ながら呆れちゃうね。猫がふらっとどこかに行くのに書き置きなんて本来なら残さないけど、俺は帽子屋に首輪もリードもぜえんぶ預けてるから、今度はちゃんとお知らせして出ていくよん。まァ出ていくような事がないのが一番なんだけど。こんなダメ猫受け入れてくれてどうも感謝するぜ、帽子屋ァ。

いつだって淹れるわよ。チェシャ猫が望むならね。

ふふ、じゃあアタシはチェシャ猫を信じるわ。首輪もリードもなんてアタシには勿体無い位ね。まぁ、誰かに譲る気もさらさら無いけれど。＿＿さてと。本編って言うものでもないのかもしれないけど、ロルを付けたやり取りもそろそろ始める？不思議の国で貴方とゆっくり過ごしたいわ。お茶も飲みたいし、お城に遊びに行くのも有りかしらね。

へぇ、嬉しいなァ。帽子屋がそんなにはっきり好意を示してくれることって珍しいじゃん？嬉しくって口がニマニマ裂けそうだ、いや元から裂けてたわ。んふふ、まあ兎に角俺ちゃんはとおっても良い気分ってわけで早速ロル回していきましょーかね。おうおう、帽子屋の行く所なら何処にだって着いてくぜェ、変な虫が付いちゃ堪んないからなァ。てな訳で先行ロルと場所、シチュエーションに何かご希望はあるかなダーリン？

たまには、ねぇ。それ以上裂けちゃったらはんぶんになっちゃうわよ。…キスも、出来ないでしょ？

そうねぇ＿＿チェシャ猫がどんな感じのロルを回すのか参考にしたいから先をお願いしてもいいかしら？アタシもそれに合わせられるように頑張るつもり。シチュエーションもこれと言って決めてなかったわねぇ。一先ず一緒にお茶でもどうかしら？外は良い天気なんだもの、ピクニックがてらお茶会にしない？

ふうん、帽子屋俺ちゃんにキスしてくれるつもりだったわけェ？その割には、声が小さェなァ。ったく俺ちゃんのココはいつでも空いてんだけどねェ。さてと、じゃ、先行ロル任されましたし、ここいらで気ままな会話は終わりとするかな。「こういうロルはちょっと…」だとかロルの形式に要望あれば遠慮なく言ってくれよ。すうぐ直すから。あと、今日も一日遅れで悪ィな。


(ちゅぴちゅぴと可憐な小鳥の鳴き声に包まれた森の中、バターの塗りたくられた羽を羽ばたかせた蝶々を捕まえ、口に放り入れながら欠伸を零す午後3時。木の上で惰眠を貪るには良い時間帯だが今日は朝からアリスを小突き回し、ハンプティを揶揄い、白ウサギを冷やかしていたお陰でどうにも腹が減っている。何より、まだ恋人の顔を見ていない。すんと鼻を鳴らすと嗅ぎ馴れた芳しい匂いが風に乗って運ばれてきて。これはどこかでお茶会でも開いているのだろうか、そう思案するとにたァと口を吊り上げて軽やかな跳躍と共に匂いの方向へ駆け出そう。見えてきた後ろ姿に心を弾ませながら抜き足差し足で忍び寄り、えいっと抱き着いては耳元でその名を呼ぼうか。)
帽子屋ァ！お茶会なら俺ちゃん呼んでくれてもいーんじゃない？

例え話よ。例え話。先のロルありがとう。凄く綺麗なロルでアタシの方が勉強しなくちゃいけないわね。ロルに対しての苦手形式は無いから今のままで大丈夫よ。アタシのロルにもたーっくさん要望付けてかまわないからね。＿＿さて、お話はこれで終わり。遅れる日数に神経質になっちゃ駄目よ。取り敢えずアタシは二週間で上げてみるけれどね。

‥‥


( 陽の光が煌々と射し込む午後三時。ふわふわの髪の毛を風に靡かせながら洗いたての真っ白いテーブルクロスの上に用意するは焼きたてのスコーンとたっぷりのジャム＆クロテッドクリーム、それから二人分のティーセットで。カチャリと音を鳴らしカップを置いた所で背後よりまあまあの衝撃と温もりと呼べるだろうそれを与えられれば見なくてもわかるその人に自然と口角は持ち上がり。「わざわざ呼ばなくたってこうして来たでしょ？自慢のお鼻ねぇ」耳元を擽る甘ったるい声に向き直りつつ柔らかな笑顔を。結果的にこうして現れた事に満足そうに頭を縦に動かして )

苦手形式無いって言って貰えて安心した。帽子屋のロルも俺ちゃんばっちぐー、もーまんたい。このまま楽しくお話してくれりゃ全然文句の付け所はございませェん。あと、遅れについてそう言ってくれてほんと助かる。出来れば2日以上は開けないよーにするからァ。さてと、じゃあこっちはもう消えるとするよん。


まあねェ。ンだけど、俺ちゃんだってお前にお呼ばれしてみたいのォ。(陽の光をたっぷり浴びた白髪は彼の纏う匂いと混じっていい匂いがするなァと、獣臭い感想を抱きながらスリスリと首筋に頭を擦り付けて。にゃあんと猫撫で声を零す代わりに甘ったるく反論しながらも、不意に興味を失ったかのように抱き着くのを止めてふらりと席につけば、香ばしい匂いの源、焼き立てスコーンに手を伸ばそう。彼の匂いも好きだけれど、鳴き喚く腹の虫には叶わない。がぶりと大きな口でスコーンを齧れば「たふぇへもいぃ？」と、もごもご口を動かしながら喋りかけ。)

なら一安心ね。互いに無理なく末永く行きましょ。じゃあアタシもそろそろ消えるわね。また何かあったら遠慮なく呼んで頂戴。チェシャ猫に呼ばれるなら大歓迎。…じゃあね。



じゃあ今度お茶会を開く時は特別な招待状を送るわね。＿＿ふふ、もう食べてるでしょうに。
( スリスリと頬擦りしてくる姿は紛れもなく猫そのもの。そうして満足すれば離れて行くその気紛れさも猫。そんな相手の勘の良さと嗅覚を頼り今まで基本的にお茶会のお知らせをした事がなかった事を思い出せば"使う紙は何にしましょう"なんて思いを巡らせつつ言葉と行動に少しばかりの時差のある問い掛けに頭を縦に動かして。それから己もまた椅子へと腰掛ける。二つのカップに紅茶を注ぎその内の一つを相手の目の前に差し出し椅子へと腰掛けては「チェシャ猫、アナタ今日アリスを追い掛け回したんですってね」スコーンを半分に割りながら少し前に苦情を言いに来たアリスの存在を思い出しそれを話として出して )

スコーンが俺ちゃんのこと呼んでたからさァ、んふ、我慢出来なかったんだよねェ。今日も美味しーぜ帽子屋。
(指に付いた残りカスをペロリと舐め取り、次いで唇を舐めれば楽しそうに言い訳を紡ぎ。最早開き直っていると言っていい図々しい態度で次のスコーンへ手を伸ばしながら、それを口に含む前に話題を振られればきょとりと動作を止めて。そうしてニィと口を三日月に歪ませれば、「帽子屋がそれを知ってるって事はアリスの奴お前んトコに来たなァ？それ知ってたらもっと早くにココに来たのにィ」と、微妙に受け答えになっていない返答を愉しげに返そう。暗に追い掛け回した事を認める言い分を終えれば、止められていたスコーンをぱくり。うん美味いと顔を綻ばせながら、「アリスが可愛い反応するから悪ィんだ」なんて責任転嫁も付け加えて。)

それなら仕方ないわねぇ。ま、貴方に食べられるならスコーンも本望でしょうに。
( 紡がれた開き直りの清々しい言い訳は今に始まった事では無い為慣れっこ。やれやれと肩を竦ませて返すのは注意なんて野暮なものではなく言葉遊びを楽しむかのようなそれで。半分に割ったスコーンの片方にたっぷりのジャムとクロテッドクリームを付けて控えめな咀嚼をした後、砂糖もミルクも入っていないストレートの紅茶で口内の水分補給をしては「…そのうち仕返しされるわよ。あの子、林檎みたく真っ赤になって怒ってたけど何か企んでそうだったもの」カチャリ、小さなガラス音をたててカップをティー皿の上に戻すと同時に彼女が此処に来た事への肯定は口にせず、されどそれが前提の話で別れる最後に見た相手そっくりに持ち上がった口角を思い出し"さぁどうする？"とばかりに緩く首をもたげて見せて )

もう8月になってたのね。どうりで最近毎日暑いわけね…。チェシャ猫、体調崩してないといいんだけど。あったかい紅茶はやめて冷たいアイスティーを用意しておくからお好きな時に戻ってらっしゃい。＿＿あぁ、さっぱりさせる為にレモンとミントの葉も用意しておくわ。それじゃあ、準備してくるわね。

今日はね、久しぶりにシンプルなパウンドケーキを作ってみたのよ。たっぷりのクリームも用意したからチェシャ猫、貴方が戻って来た時に食べられるように冷やしておくわね。

それから台風が大きかったけど、貴方の背後様は大丈夫だったかしら？＿＿メタな発言だって？今回は許して頂戴な。どうぞお体に気を付けてって貴方からも伝えて頂戴。…大好きよチェシャ猫。

にゃあご。って気軽に出入り出来るくらい知能の無い猫だったら良かったんだけど。2回3回と本当にすまない、帽子屋。女王様に仕事を言い渡されて、なんて言い訳にならないと知っているから、今日はちゃんとお別れに来た。見ての通り、俺ちゃんじゃァ帽子屋を幸せには出来ねェみたい。声を掛けた時はこんなに忙殺されるとは思ってなかった、本当に素直にお前に惹かれたンだ。だから決して相性の不一致で消えるンじゃァない。ただ、こんなに帽子屋を待たせて負担になってしまってンのが現実だから、早く新しい相手を見付けて幸せになってくれと背中を押す方が大切だと思ったからだ。勝手な振舞いと判断だと分かってる、傷付けるかもしれないとも分かってる、本当にすまない。謝ることしか出来ない。俺ちゃん、優しい帽子屋と少しの間でも喋れて嬉しかった。ごめんなさい、幸せになって。

＿＿ん、お帰りチェシャ猫。
此処で貴方を引き止めたらアタシは重荷になっちゃうかしら？貴方が来たい時に来ればいい、そんな言葉で貴方を縛る事は出来る？

此処はずっとずーっと時間の止まったお茶会の場所。ずーっとこのままよ。だからもしお腹減ったら何の迷いも遠慮もしないでいらっしゃい。待ってるとは言わないからね。また此処で偶然会えた時には一緒にお茶会しましょうね。

ただいま、と言ってもいいのかな。縛るも何も、最初からお前にしか懐いてないし、重荷な訳が無い。現に、こうやって恥ずかしげもなく戻ってきてるしなァ。自分から勝手にお別れ切り出しといて、何やってンだろ俺ちゃん。女々しいし、自己中だよなァ。


時間が止まったままかァ、最後の最後まで気を遣わせて悪ィな帽子屋。ホントに出来た男だよなァ、やっぱ勿体ねェなァ、俺ちゃんなんかに。もうどこかで幸せに暮らしてるだろうか。そうであればいいと思ってる。お前が新しい生活を始めて幸せになってる事を祈ってる。だから、この場だけは駄目猫に貸してくれな。帽子屋の残り香がある、ような気がすンだ。また、ちょいちょい来ようかな。一人でも、茶と菓子があればお茶会だし。少しばかりの思い出が詰まったここが、俺の帰る場所だし。…ハハ、帰巣本能が強いのも困りモンだなァ。

あら、お帰りチェシャ猫。言ったでしょ、此処はずっとこのまま在り続けるって。

それにしてもここ最近すっかり寒くなってきたわねぇ。もう秋って呼べるかしら。＿＿＿動じてないように見える？もしそうだとしたら可愛らしいその目はちょーっとお疲れなんじゃない？凄く凄く驚いてるわよ。それから言葉なんかじゃ言い表せないくらいに舞い上がってる。恥ずかしいくらいにね。…ま、でも折角また会えたんだもの、お茶会しましょう。一人でだって勿論出来るけど、やっぱり二人の方が楽しいわ。ね？それでまた何処かに散歩に行って、また帰って来たくなったら現れる。猫も帽子屋もそれでいいのよ。