ロズ 2019-05-24 00:34:54 |
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第一話
「起きろジャンヌ」
突如叩き起こされて、まだぼーっとしている頭を振った。目の前には桃色の髪とアメジストみたいに綺麗な紫色の瞳。
ゆっくりと、朝のきりっとした空気を吸って自分はするべき行動を悟った。
ドンッ!
「ぐはっ!」
「何すんだよどアホ!」
それはこっちのセリフだ。わたしは、朝っぱらから乙女の部屋に侵入した不届き者を見下ろす。殴られた頬をおさえて、悔しそうに睨んでくる。
「グレン、そっちがその気ならわたしだって受けて立ってやるわよ」
もっとも、四歳も年下の女の子に殴りかかったらグレンが死ぬだけだ。ーーあ、間違えた。死ぬよりもつらい目に合う。
具体的には、ユーリやエヴァの正義の鉄槌がくだる。
「ユーリにいたずらしに行こうぜって誘おうと思ってただけだよっ」
慌てたように弁解するグレン。
まぁ、わたしだって弱いものいじめはしたくない。
「まーね。あんた一人じゃユーリに勝てないもんね」
「くっそ、なんでこいつはもうちょっと年上を敬おうっていう気持ちをもてないかなぁ」
敬うわよ。
敬う価値のある年上はね。
でも、ユーリにいたずらを仕掛けるのは面白そうだ。ここで一番の優等生のユーリをライバル視しているグレンだが、その力量は一目瞭然。わたしが加わればその戦いも少しは見ごたえがあるものになるかもしれない。
わたしは、殺風景な部屋を一瞥し、ベッドからジャンプしてグレンの隣に華麗に着地する。
「わたしじゃないと駄目だもんね」
ここには、もっとたくさんの人がいる。子どもたちがいる。わたしよりも賢い子や強い子だっていっぱいいる。それでもわたしを選んだってことは、わたしじゃないと駄目ってことだ。
「いや、別に誰でもよかったんだけどさ、お前とオレだけだろ、ユーリのこと崇拝しまくってないの」
「……協力しないわ」
「ジャンヌじゃないと駄目ですっ!」
ふっふふ。
しょーがないわね。
女子からの人気ナンバーワン。男子からの尊敬も一身に集める完璧エリート、ユーリ。
ユーリと同い年なのに負けちゃって可哀相だしね。いじめるのはそのくらいにしといてあげよっと。
「具体的には、何をするの?」
「落とし穴をほってユーリをはめてやるんだよ」
なるほど。
「よし、じゃあスコップを用意するわね。やるなら徹底的にやりましょ!」
わたしとグレンは目を見合わせて、くっくくと笑った。ユーリがわたしたちに助けを求める顔が目に浮かぶわ!
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