ブバルディア 2019-05-18 22:32:54 ID:cf2b77bae |
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ガーデニングと聞いてにっこりのシルク。
「あら。ジェイクさん、私も好きなのです。
育つ様子を見るのが毎日の楽しみで、よく空いた時間に眺め……えっ?」
目を見開いたかと思うと、穏やかなジェイクを質問攻めにした。
非常によろしくないクセである。
「青薔薇ですか?幻の青薔薇?あらあらまあまあ。すてきですねえ。苗木はどこに?どうやって作り出したのですか?水酸基はどうなさいました?」
《…………苗木は【ジェイド】が持ってきた。
どっかの国を滅ぼした時に、宝物庫に
綺麗な花の苗があったからって。
仙人掌と、黒百合と一緒に世話してたら
どんどん育ってった》
質問攻めにされて少し驚いていたが、
ゆっくりと語り始める。
驚いた様子のジェイクを見ても、高揚した気分は落ち着かない。
「ほ、滅ぼし……?しかし、持ち帰ってきてくれるなんて、ジェイドさんたら可愛らしいこと。
世界に青薔薇があるなんて知りませんでした!
植物の学徒としては、ぜひ製法を知りたいものです!」
ここまで早口で話したが、穏やかなジェイクを見て、
やっと頭が冷えた様子。
「あ、ごめんなさい。つい騒がしくてしまって。」
《………別に》
ジェイクはふるふると首を振る。
「【ジェイド】と【ジェイク】は二つの精神で
一つの体を共有する、一心同体なんだ。
宿主【ジェイク】の身体がちょっとでも
傷つこうものなら、【ジェイド】は激怒する」
リリィはにこにこと微笑みながら語る。
「あらまあ。お二人は双子か兄弟のようで微笑ましいですねえ?。
しかし、生まれつき一つの体に二人いらっしゃったわけではないのですか。ジェイドさんが居候しているようなものということでしょうか。」
友達をにこにこしながら語るリリィに、思わず笑みがこぼれる。
「…そうじゃなくて…【ジェイド】は
【ジェイク】が自分を守るために作った
第二の精神なんだ。それに、【ジェイク】と
【ジェイド】は記憶を共有してなくて…。
【ジェイド】のしたことは【ジェイク】には
何一つ分からないんだ」
リリィはまた目を伏せる。
痛ましい話に涙が滲んできた。
「……そ、そうですか。ジェイクさんはお疲れでしたか……。
たしかに、何か理由がなければ二人も存在しませんよね……。」
涙は堪えたものの、ついには顔を覆った。
顔を上げたらリリィがにこにこしていたので、つられて悲しげな表情もやわらぐ。
「たしかに、どちらかが欠けたら彼と思えないですね。でも、複雑な気持ちは隅に残るかも……。」
《…俺とジェイクは表裏一体。
表がジェイクで、裏が俺。それで良いんだよ》
【ジェイド】がぼそりと呟く。
ジェイドの言葉を聞き、目を伏せてこう言った。
「そんな、それでよろしいだなんて……。
たしかに……ジェイドさんは二番目にできた人格でしょうが、ジェイクさんもジェイドさんも、どちらも表だと思います。」
《…お優しいジェイクはそれでも許してくれる。
でも、それは俺が許せねぇんだ。
…ジェイクは、俺を作ってくれた。だから
俺は、ジェイクを守る。この身体に、傷一つ
だって付ける訳にゃいかねぇんだ》
【ジェイド】の瞳はどこか哀しげであった。
「ジェイドさんは誇り高いのですね……。
これ以上、何かを申してはいけないというものです。」
悲しくも勇ましい決意を語るジェイドに、切なげな顔をしながらこう言った。
「そのかわりに応援いたします。
その体に傷がついたら、ジェイクさんが起きたときに痛みを感じないように跡形なく治しますから、遠慮なく頼ってくださいね。」
ジェイドにひらひらと手を振り返したあと、不安げにリリィたちに声をかけた。
「あの、改めて質問したいのですが……、本当に悪の星を倒すお手伝いをしてくださるのですか?
私は……恥ずかしいですが、戦いを見たことすらありません。それでも、きっとひどい旅路になると予想します……。」
「大丈夫だよ。…血にまみれるのは、
僕たちで良い。君は、汚れちゃいけないんだ」
リリィはにこり、と微笑んだ後ぼそりと呟く。
《………ああ、心配するな…守ってやる》
「お二人に心から感謝いたします……!」
ほっとしたシルクだが、次第に声色が暗くなる。
「しかし、リリィさん、汚れちゃいけないだなんて……おっしゃらないでください。
参戦を頼んだ私にこそ責任があります。
剣を振るうことはできませんが、汚れるのは私です。」
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