読・書【Long/Middle/Short All OK】

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御鏡  2019-03-23 18:45:40 
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このトピは、小説を載せ合うトピです。
(『絵や小説を載せ合うトピ』の
セイチャ版と思っていただければ…)

タイトルに記載した通り、
長編も中編も短編、全て大歓迎です。
読む専でも大丈夫ですし、
小説でなくても、感想等もOKです。

では、皆様のご参加をお待ちしながら、
一筆して行きたいと思います。

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  • No.37 by 御鏡  2019-06-01 21:34:00 

明日、6月2日は我が家の料理長の誕生日、なので…料理長のお話を一つ。
■■には、ご自分のお名前を置換してお読みくださいませ。

『狂ってしまう』

ゆっくりと時間を掛けて、男は手にしたそれを丹念に磨く。男…キドルの相棒。
彼が、異形館で料理を手掛けるのだと決まった時、異形の医師が贈呈した巨大な肉切り包丁。

「…これで、仕事、に…取り掛かれる~…」

蝋燭に灯った炎が揺らめく。並みの人間には到底ない怪力を用いて、包丁を持ち上げる。
それはまるで鏡のように磨かれ、彼の象徴とも言える、頭部の蝋燭を映し出していた。

「やあ、Mr.キドル。調子はどうだい?」
「俺、は上々~…G、こそ…どうだ…?」

厨房に向かおうと、部屋を一歩出た瞬間に、天秤頭のジジャと鉢合わせる。秤を動かしながら、
彼は屋敷の玄関の方角を指差し、和やかに言った。

「勿論!僕も上々だよ。ところでMr.キドル。丁度"彼女"がやって来たようだが、どうするんだい?」
「!!…感、謝…後で、好き、な物を…御馳走する~……」
「それは、嬉しい話だね。では!金と愛と友情と、その質量は全て等しく同じ、同じ。
ゆらゆら揺れて、ストンと落ちる。ここらでお別れだね。金と愛と友情と、その質量は
全て等しく同じ、同じ。ゆらゆら揺れて、ストンと落ちる。金と愛と友情と…」
「耳、に…残る歌…」

舞うように去ったジジャを見て、キドルはポツリと呟いた。そして、厨房に向かい、
冷蔵庫を開けて食材を取り出す。

「今日、こそ…作、れる……一世、一代の…自信、作~…」

ブツブツと呟きながら、キドルは千切りにした玉葱を鍋に投入する。もし、彼の表情を
読み取れる人物がいたならば、きっとこう言うのだろう。
非常に嬉しそうだが、何を企んでるんだ?と。

「今日こそ覚悟して貰いましょうかね人間様ァ!?」
「無理無理無理、絶対無理ーーーーーーーーーーーー!!」
「…騒がしい…料理、が…不味くなる~…」

粗方スピーカー頭のラウディスピックが"彼女"を見つけてしまったのだろう。怒号と絶叫、
そして走り回る足音が厨房まで響き、キドルは静かに愚痴を零した。

「あっ、テメ、そこは卑怯だぞ!」

ラウディスピックのその一言を最後に、屋敷中に響き渡っていた音が止む。

「ど、どうなっても知りませんからね。僕は悪くありませんから。
そ、そうですよ。アイツの仕事場に入ったお前が悪いんですよ…」

ラウディスピックは、怯えた様子で呟くと、周りに誰も居ないのを確認してから、
逃げるようにその場を去った。

「…やっと…静か、に…なった~……」

一方厨房では、キドルが仕上げをしようとしていた。彼が再度包丁を振り下ろしたその時、
背に強い衝撃を受けた。

「………」

液体がそこから溢れ出て、足元に水溜まりを作る。ゆっくりと背後を振り向けば、
そこには"彼女"が、■■がいた。

「あ、あの、えと。ご、ごめんなさいキドルさん、お仕事中とは知らなくて…あの、その…
け、怪我、しちゃいましたよね。大丈夫、ですか…?」

未だ混乱しているのか、それとも今だから混乱しているのか。どちらにしても、
今のキドルにとっては変わらなかった。

「…手元、が…狂った~……」

包丁を振り下ろした瞬間に背中に衝撃を受け、位置が若干左に寄った。つまり、具材を押さえる
左手の上に、包丁が振り下ろされた。敏感なキドルは、咄嗟に振り下ろした腕にブレーキを掛け、
食材を押さえていた手を引いた。とある物さえなければ、キドルの指は傷付かずに済んだだろう。
だが、地球上の全てはそれに逆らう事は出来ない。そう、重力だ。重力さえなければ、切れなかった。

「……イタイ……」

今も尚、キドルの指からはドクドクと血が流れ落ち、彼の隣では■■が慌ててポーチを漁っている。
キドルは痛みに耐えながらも調理を続けていたが、不意に動きを止めた。何事かと思い、■■が
彼を見やろうとした刹那、停電が起きた。

「ひゃ!な、な、な…何で、このタイミングで停電が…っ!?そ、そうだ、キドルさんの蝋燭…!!」

暗闇の中、手探りでライターを探していると、微かな明かりが灯る。同時に、強い力で腕を
掴まれた。突如腕を掴まれた事に驚いた■■が、恐る恐る振り返ると…

「責任、は、取って貰う、ぞ~………」

そこには、前髪で目を隠し、コック帽を被った、長身の男が居た。コック帽の上部には、
蝋燭が付いていて、そこでは炎が淡く燃えている。■■が慌てて辺りを見渡すと、
そこにキドルの姿は無かった。

「え、あの、責任って…それに、あなたは、誰ですか?キドルさんをどうしたんですか!?」
「責任、は…責任~…」

早口で捲し立てる■■の口に、男は左手の指を数本捩じ込んだ。同時に、逃げられないよう右手で
彼女の後頭部を押さえ込む。あまりに突然の事に、■■は混乱し、目を瞑って思考を巡らせた。

(何、この臭い…錆臭い…それに、鉄みたいな味もする…ひょっとして、この人………キドル、さん…?)

薄らと眼を開くと、目の前の男は満足そうな、嘲るような笑みを携え、■■が自身の指を舐めるのを
眺めていた。ゾク、と寒気が■■の背筋を駆け抜け、身体中に危険信号を送る。そんな彼女の心中を
知ってか知らずか、男は彼女の口から漸く指を引き抜いた。唾液はまるで蜘蛛の糸のように引かれ、
蝋燭の光に反射して、雨露のように輝いていた。彼方に飛んでいた■■の意識を戻したのは、
背に感じた鈍い痛みだった。

「今日は俺の誕生日~…欲しいのは、一世一代の最高作だけ~…」
「ちょ、何するんですか…!?」

男の後ろに、蜘蛛の巣が張った、くすんだ天井が見える。どうやら、床に押し倒されたらしかった。
男のブロンドの前髪の隙間から覗く紅い瞳が、爛々と輝いている。男は■■の腕を押さえ付け、
あろうことか小さな彼女の身体に馬乗りになって、彼女のシャツの裾を軽く捲り上げる。

「言った筈だ~…俺が欲しいのは、一世一代の最高作…作るには、最高の材料が必要……そうだろう?」

男が邪気を含んだ笑みを浮かべるのと同時に、■■は意識を失った。

「■■…俺はまた、狂ってしまう…な…だが、全部お前の所為…お前、の所為で、
俺も、俺の手元も狂うんだ……」

出来上がった料理を食べながら、男はボソリと呟いた。



ええ、■■がどうなったかは御想像に御任せしますよ。

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