御鏡 2019-03-23 18:45:40 |
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連続投稿失礼します。
「さ よ な ら」
君の唇が、そこから発せられるはずである
声は無かったがそう紡いだ。
と同時に、君は屋上の縁へと走り始めた。
「待って!」
僕は必死に走るが、彼女には届かない。
たった数メートルの距離。
それが永遠であるかのように。
「ね え… し ぬ の っ て、 こ わ い ?」
彼女は、柵の外から身を乗り出し、笑う。
「……分からない。でも、死んでほしくない」
僕は彼女にゆっくりと近付く。
僕の答えに満足したのか、彼女はまた笑う。
「そ っ か… あ り が と う」
そのときの笑顔はまるで、女神だった。
その笑顔を顔に張り付けたまま、彼女は縁から
天使のごとく虚空に、飛翔した。
しばらくして、悲鳴が響く。
僕が下を見ると、血溜まりの中心で、
しかし頭が潰れたりはしていない彼女が、
眠るように死んでいた。
最後に彼女は、
「あ い し て」
と呟いていた。
僕の意識は途端に眩み、頭の奥で彼女の笑顔が
フラッシュバックする。
次の日。
僕はまた、彼女を見た。
普通にクラスへやって来て、勉強をしていた。
信じられない。あそこから落ちて、
無事であるはずがない。
…そうか、これは…罰だ。
彼女の代わりに僕が死ぬまで続く、罰。
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