御鏡 2019-03-23 18:45:40 |
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初投稿失礼します。
「僕」は一人だ。でも、「僕」は一人じゃない。「僕」の中には知らない「僕」がいる。
昔、母さんに言われたんだ。「何で貴方なの」って。言われたときはまったく意味がわからなかった。何で、なんて、此方が何で、と問い返したい。僕の何が悪いんだ、とも。
しかし、謎はすぐに解けた。兄ちゃんに教えてもらったんだ。僕にとっては、衝撃の事実を。端的に言ってしまえば簡単で、だからこそわざわざちゃんと言おうか。
「僕」は元々二人だった。察しの良い人なら、もうわかっているかと思う。でも、あえて言わせてもらおう。「僕」は双子だったのだ。本当なら生まれてくるはずの「彼」を、「僕」は潰してしまった。「僕」がいなければ、「彼」は今頃生きていたのだろう。そう思うと罪悪感がひどかった。
だって、僕は何もできない。テストをすればいつだって平均よりも少し下だし、ボールを投げられれば落としてしまう。顔だって良い方じゃない。だから僕は嫌われる。何もできない僕じゃなくて、それが「彼」だったら、期待に答えられたのかもしれない。
「何で、何で……」
涙が静かに零れた。どうしようもない。今更僕が期待に答えられるような凄い人間になれるわけじゃない。
そんな僕なら、きっとこの世界にはいらない。募集がいなくたって、世界は動いていく。
「……さようなら」
手に持った凶器を首に当てて真横に引く。これなら確実に、自分を消せる。これで皆を困らせることもない。そうだろう?
朦朧とする意識の中で、知らない「彼」が笑った気がした。
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