語り手 2019-01-06 21:47:19 |
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うん、夜ご飯だけじゃあ足りなかったの。
(開いた扉の先に居たのは待ち望んだ相手で、此処で背後から月光でも差し込んだらばそれは幻想的な光景だったに違いない。とはいえそんな浪漫は起こりえないし、大体今夜の己はお怒りなのだ。表情ばかりはぶすくれたまま取り敢えず聞かれたことに答えてみるも、それでは怒りの原因について誤解を受けても可笑しくないとはとんと気づかず、指先をまたひと舐め。一度床へ落とした視線を再び兄へ戻せば、「でもちがうのよ。ミヤコに足りなかったのはもっともっと、べつのもの。」なんて謎掛けのような言葉を発して唇を尖らせれば小首を傾げよう。その仕草は"それが何だか分かる?"なんて言外に尋ねていようか。まあ然し、何時までも戸口に立っていれば寒かろう。表情とは裏腹に、ぬっと前方へ伸ばした両手を"おいでおいで"と腕の中へ誘うように差し出して。)
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