鯨木かさね 2018-12-31 13:01:56 |
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(可愛いものは好きだった。其れは幼い頃からずっと好きだと言える唯一のもので、可愛い服を着させてもらえない変わりに可愛い何かを愛でるだけが許されていたからだろう。この林檎を兎の形に切ったのだって普通の物よりも可愛い方が得があると感じるからで、相手がそれを齧るのを見て「…可愛いものは見るだけで心を癒すヒーリング効果が有ります。日々疲れきった心にゆとりを持たせる事も、私の場合日々を生きる糧に可愛いという要素が活動源の二の次を補っていると言えます。」前に雑誌で見た知識を交えて、席を立った相手を目で追った。伸びてきた手を避ける事はせずに掴まれた顎、強制的に相手の双方の目を見つめる体制のまま表情はやはりなんの色も移さない真顔だが、掴まれた手を払い除けもせずに淡々と口を開いた。「…男は皆狼。世間一般論で言うなら男は皆欲に忠実な生き物だと言えます。ですが、貴方の場合≪人間≫という1つの分類にしか興味は無いんのではないですか?」相手は自分がどう出るか、この後の行動を予想してその先にある何かに期待をしている。だが、自分は彼の期待をいい意味では裏切れない。説明書みたいに元々から用意された文字を繰り返し、繰り返し何の面白味のない其れが鯨木かさねという1つの存在に過ぎないというのに。向けられた視線に何時とも代わり映えのしない瞳を向けるが、近づけられた顔に沿うように此方も手を伸ばせば相手の黒髪をそっと撫でるように手を滑らせた。サラサラとした手触りに手入れの行き届いた髪はなかなかの触り心地で思わず両手を伸ばし包み込む様に撫でてしまっていた…。)
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