鯨木かさね 2018-12-31 13:01:56 |
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>折原臨也様
(皮肉を込めた言い回しだが、不味いと一言も言わない彼は自分の作った料理を食べてくれていた。所々にチクチクとイヤミを織り交ぜる所は相変わらずで、でも次々と箸を進める姿は見てると無性に世話を焼きたくなる。やはり彼は似ていた、猫のように気まぐれな雰囲気を纏う彼に少し母性に似た感情が沸いた、一応買っておいた果物でも剥いてやろうと再びキッチンへ戻る前に彼の問いかけに口を開く。)
「新しい出会いですか、少し前に…こんな私でも一人の人物として、それと同様な扱いをしてくれる人間には岸谷新羅様以外にもう一人出会った事があります。…平和島静雄様、あのセルティー・ストゥルルソンを友人と言っていた彼なら、私の事も受け入れる程の器は備わっていると思いますが…。」
少し目を細めて、言葉の続けを言う前に足元へと目線を下ろす。きっと彼は優しい人だ、池袋最強と恐れられているがその素性は繊細で、友人としての繋がりを第一に考えるそんな彼に自分という存在はあまりにも不釣り合いだった。幼い頃から教えられたとはいえ黒く手を染め続けた自分には真っ当な道は到底歩けないのを十分に理解しているからこそ恋愛と無縁の生活を続けている。彼と目線を合わせないまま続けた「…彼は恋愛とは無縁そうですので。」とそう補足を付け足して。結論として今は気になる相手がいないとそう伝えた。
「…味見はしましたし、不味くないなら私が食べる意味は…それに自分の作った料理の味なので特には。」断りたかったが彼の持つスプーンはなかなか引き下がらない。仕方が無さそうに彼との距離を縮め口とスプーンの下に手を添えて其れらを口へと運ぶと静かに咀嚼し飲み込む。彼が言った通り、悪くは無い味だった自分で言うのもなんだが失敗はしていないそれは美味しいという分類には入るだろう。無言で頷き、空になっていたコップに水を継ぎ足すとキッチンへ戻り皮を剥いた林檎を皿へ盛り付け彼の座るテーブルに並べる。皮をうさぎの耳に仕立てた定番の形にして、空いた皿を下げると向かいの席に一息つくため腰を下ろした。「…今回の件には幾つかの質問がございます。ひとまず簡潔に申し上げますが、ゲームセンターや私の手料理、なんでも条件を飲むと言ったのは私ですが今回のこの行動に明確な意味があると思えませんでした。」何故彼は自分をあの場に連れていったのか、試されることの多かった今日一日の行動への疑問を正直にぶつけた。
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