情報屋 2018-12-09 19:31:53 |
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流石、頭と口だけはよく回る男だ。ここまで有用な悪知恵だと立派な才能だな。
( 上機嫌な笑みを一つ、手にしていたワインと一緒に自信に満ちた言葉を残して此方に背を向けて行ってしまう相手に一体何をするつもりだと首を捻った。この時には先程覚えた不安は遠くに消え去っていて、今はただ事の行く末を見守るに徹している。何処からか拝借したらしい料理を態とらしさの欠片も感じさせぬ自然な動作で例の男へ向けて散乱させたのを見て、成程と唸った。彼に比べれば些か器用さには欠けるが此処まで見せられても尚察せぬほど馬鹿では無い。時間にしてたった一瞬、此方が背負っているリスクすら歯牙にもかけぬといったスマートさで全て丸く収める事に成功していた。奴からすれば此方が感じた不安など無用な物でしか無いのだろう、途端に言い知れぬやるせなさを感じて、愚痴の代わりに嫌味混じりの賞賛を口元で呟く。一通り事を終わらせた相手が合図してくるのに小さく舌を出して反抗的な態度を取るも、意味を正しく汲み取った男は先程押し付けられたワインをワインクーラーへ入れると大人しく台車を押し始めた。)
……お見事。俺が持ち込んだ問題なんて、探偵サマに掛かれば些細な事だったようで。お前の隣にいると、大体の心配は杞憂に終わるね。
( 先程問題を起こした彼の隣に立って尚、危惧していたコックから此方に意識が向けられる事は無かった。矢張り此処まで計算の内だったと、察してはいたのだが全てが彼の手のひらの上である事が腹立たしくも感じる。こういう時漠然と黒い靄が胸の奥に広がるのは、先程の男やコックと同じように自身もまた彼から見れば思惑通り動く駒の一つなのだと思い知らされるからだった。顔を合わせて第一に発した言葉の語気はほの暗い感情を霧散させるように意図せず棘を含む。ほんの数分前にはこの男の確固たる自信に信頼を置く様子さえ見せたというのに随分矛盾した態度だと自嘲を零すが、相手が別段気にするとも思えない。予定外の料理で手が塞がった相手の代わりにそのまま台車を押す役目を担うと従業員用のエレベーターがある通路へ足を向けた。)
( /これまであまり長期お相手して下さる方に出会える事が無かったので、そう言って頂けると大変嬉しいです…!!お互い無理のないペースで進めていきましょう!/此方蹴可です)
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