悪魔 2018-11-04 19:58:34 |
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(それは突然の出来事だった。服を無事購入できた自分達は食事を取るための店まで向かっていた道中、彼から抱き寄せられた後、突如として彼の体が大きく傾いてきて。それと同時に苦しそうなうめき声をあげるこの状況は只事じゃない、そう脳が警告を知らせてくれたのだが。急いで彼の体を抱き締めた時にはもう惨事が過ぎた後のことで、抱き寄せた右側の手のひらにぬるりとした感触を感じる。それに目をやれば赤く生暖かいその液体がみえるのだがその原因は一目瞭然で、彼のすぐ近くの傍らで青ざめた表情を浮かべている青年の近くに転がっているナイフだろう。「────おい、そこのお前一体なんのつもりだッ!」牙を向き座り込む青年の胸ぐらを掴めば、青筋を浮かべ涙を貯めるその瞳には光が宿っていない暗示を掛けられている。直感だが何かしらの人間ではない者が我々を狙っている、もしかしたら自分だけが狙われていてリュカがそれを庇った、まだ明確には分からないがそれを考えるときりがなかった。ならば今この場に留まるのはリュカの言った通り危険だ。彼の傷を庇うように此方へと傾けるように促して、なんとか人混みを抜ければ近くにあった小さなバーの扉を開ける、中にいた主人は温厚そうな老人で怪我をしたんだ助けてくれ。そう叫ぶとすぐさま中へと案内してくれて加えて応急処置を施してくれた。「何で、何でなんだ、俺なんかの為にお前が傷つく事は無かっただろうに。」血をだいぶ流したのだろう、唇の色も悪くややカタカタと震える彼。少しでも温めれれば、と彼の手を握りしめるも体温の低い自分は彼を温めてやることさへもできない。なんて無力なんだ…険しい表情で内心自己嫌悪する、掴んでいない方の手は悔しさと虚しさ二つの感情を抱えていて自分の肩を掴むと爪を食い込ませるぐらい強く握りしめた。ギチギチと服が軋む音に浅い彼の息遣い、この悔しさは黒幕を殺す事でしか発散されることは無いにちがいない。席を立ち復讐するための道のり、部屋の扉のドアノブに手を掛けた。「────リュカ、俺は何を犠牲にしても何を切り捨てたとしてもお前を守るよ。だから、待っていて欲しい…またいつもの優しい笑顔を俺に見せてくれ。」──パタン、扉の閉まる音だけが部屋に響いていた。)
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