ほのか 2018-07-30 23:57:44 |
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【>13から…】
通学路の途中にその湖はある。
湖といってもそんなに大きなものではなくて、よく晴れた日には対岸のベンチまで見える。
ちょっと大きめの"水溜まり"って感じ。
現に地元の人たちはここを「沼」って呼んでたし、私も子供の頃からそう信じて疑わなかった。
けれどおととし、私が高校生になったばかりの春に、国や県のお偉いさんたちが「ここは湖だ」とあっさり認定したのだ。
地元の人たちが昔から「沼」と呼んでいたところが、その日からここは「湖」になった。
なんと勝手な取り決めだろう。
それからというもの、この沼…いや、湖の周辺は整備が進められ、「昔ここいらで戦があったとき、地元の武将が体を清めて敵の大軍に勝利した」とか、「天上から舞い降りた天女が水浴びをして岸辺でうたた寝した」とか、それまで聞いたこともない伝説(?)が書かれた看板が、これ見よがしにいくつも掲げられた。
おまけにここを「神棲湖(かすみこ)」なんて名付けたものだから、この湖はパワースポットとして一躍全国に知れ渡ることになった。
観光客はちょっとうざいけれど、道も舗装されたし橋も掛けられたし、通学路としてはかなり格好がつくようになった。
ここが沼だろうが湖だろうが私には関係ない。
私は単純にこの湖畔の散歩道が好きだ。
それにしても、まだ朝早いというのに、あの人だかりはなんだったんだろう。
この時間、いつもは疎らな観光客(らしき人たち)が、大勢湖畔に集まって水面を眺めていた。
通学途中、いつもなら湖畔のベンチに腰掛けてぼんやり湖面に遊ぶ水鳥を眺めるのが日課なのだけれど、今日はやめておこう…。
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