赤の女王 2018-06-06 13:39:59 |
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>白の女王
(ざわっと、肌が粟立つ感覚に背後を振り返れば必死の形相で追い掛けてくる人、人、人。それに思わず逃げ出したのは本能的なもので、捕まればどうなるかなんて足りないおつむじゃ分からない。たったと軽やかな足取りで廊下を走るなか、何故逃げているのか、何故追いかけてくるのか、それを至極真面目に考えた結果、頭の中でぽんと手を打ち成程追いかけっこかと納得しよう。とはいえ勝手知ったる赤の城とは違い、初めて足を踏み入れるここで地の利など己には無い。追い詰められていく中で、逃げ道を指し示してくれたトランプ兵に呑気にもはてと首を傾げて。その疑問は鬼だと思っていた相手が助け舟を出してくれた事によるもので、然しそもそも思い込みで動いているこの状況、彼は逃走者サイドなのだと勝手な答えでまたもや納得。一緒に逃げようと差し出した手は彼が引っ立てられていくことで空回りし、呆気に取られる中早く逃げろと言わんばかりの周囲の目に押されるようにして、その扉へ手を掛けよう。最後にもう一度後ろを振り返って見たその光景は、やけに網膜に焼き付いて。捕まったのだから、今度はトランプ兵の彼が鬼だろう。どうして皆一緒に帰っていくの。純粋な疑問ではあったが、お陰でここに来て漸く何か思い違いをしていた事に気が付けば、取り敢えず外に出ながら考え事を。鬼ごっこじゃないのに追い掛けられた、彼が代わりに捕まった、それならその次は何が待っているのか。ぐるぐる唸りながら頭を働かせても首斬りにまで考えが及ばないのは、その経緯を知らないが為。まさか王座に座る件の美形がそれを命じていただなんて誰が想像出来ようか。折角逃がして貰ったにも関わらず、その有難さを理解していない幼子はまたもや城へ侵入しよう。知らないのならば知ればいい、何より二度目は出口が分かっているのだから。そんな愚直な考えにより、再び大広間前の廊下に戻ってくれば物陰に息を潜めて。武装のつもりで持ったきた雪玉が溶けることを気にしながら、聞き耳を立てていよう。)
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