助手 2018-05-23 21:25:11 |
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(彼に心を繋いでしまうような行為、その束縛的な行為をこの男は嫌がらなかった。その上、目元をネクタイに覆われていても分かるほどの愛おしさを滲ませながら自分の指先へと口付けを落とすのだ。彼がこの束縛を容認すれば、いつか自分は完全に彼を社会から隔離してしまうかもしれない。例えば何か理由があって仕事に疲弊してしまった時や、心をすり減らすほどに悲しい出来事があった時。自分に、彼しか心の拠り所が無くなってしまうような事があった時に、彼と事件との関わりさえ絶って無理矢理彼をこの部屋に繋ぎ止めてしまうようなことが、100パーセント無いと言えるだろうか。そんな考えが不意に頭に浮かんで、そっとその口元から手を離した。それで彼に嫌われたら、という思いが急に過ってのことだった。再び相手の背中に頬を寄せたまま目を閉じる。いつか自分を狂わせてしまうかもしれない危険性を孕むほどに、彼は魅力的で愛すべき存在なのだ。)
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