助手 2018-05-23 21:25:11 |
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…っ、でも、それを証明できるものなんて無い。いや、今は証拠はいらない、もう何も言わないでくれ、明日聞くから。
(何も言わずに部屋に入ってきた彼の言葉にただ怒りを宿していた瞳に僅かな困惑が揺らめいた。ただの自分の早とちりで、相手を罵っていたのかと思うと動揺するのも当然だった。しかし一度怒りを露わにしてしまったせいで簡単にその怒りを鎮めて自分の非を認めることができなかった。この男は変な所で頑固者なのだ。証明できるものがないなんて、苦し紛れに告げたものの彼ならすぐに証拠を見せて自分を納得させることが出来ると思い出して続けざまにそう付け足した。今の高ぶった気持ちのままでは、きっと何かと文句を付けて彼に謝れない。明日、少し落ち着いてから彼の話を聞いた方が良い、そう考えて怒りと困惑とが入り混じった曖昧な視線をようやく相手に向けてそのまますぐにその目を伏せた。気まずさを軽減するためには何か動いていないとやりきれなくて、ただ黙々とネクタイを引き抜きシャツのボタンを外して着替え始めた。)
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