◆ 2018-04-03 00:00:02 |
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>Leone
――へ、ぇあっ…!? …ッあ、ああぁえっと、あのっあの……いっ、行くっ! 俺が行くから…少し、待ってて。……、あの、でも…それ……他の人には、絶対にしないでね。
(柔く此方の手を包み重なった策略の色合いに毎度事ながら容易く心臓を鷲掴みにされては、よもや彼を疑う訳もなくドクドクと波打つ胸を抑え半ば喘ぐようなたどたどしい返答を口にし。急速に熱を上げた頭では精々その魅惑極まる瞳へ注意を促すのが精一杯、続けて階下へと急ぎ靴先を向ける以外の挙動などおおよそ取れよう筈もなく。――さて、届いた品々をよろめき抱えて戻れば、とうに伽藍堂と化した部屋へいくらレオーネ、と呼び掛けようとあの愛しの音色は決して返らずに。途端狼狽を顔に走らせ抱えた荷を堪らず地へ置くと、忽然と彼の消えた自室を幾度も見回し膨らんでもいない布団をはいでと徒労を重ね始めて。トイレだろうか、などといった呑気な推測も、さすが先の不穏な会話を前に忽ち塗り潰されてしまい「……、そんなに…俺といるの、嫌だった?」数日振りに蘇る負色に色付く思考の帰結は早く、やけに広い部屋へ寒々しく落ちる静寂がこれ以上ないほど自明の答えを示し。暗く淀んだ顔色で唇を引き結び、つかつかと迷いのない足で部屋中央の席へ腰を下ろすと、もはや用のない冷えた食事もそのままに白色のキャンバスへ向かって性急に筆を取る。それは今更彼を追っても、と理性的な判断を下したというよりは、単に堪え切れぬ感情の吐き出し口を咄嗟に求めたに過ぎず、負の感情の転化が大半を占める己の絵画へのこういった逃避はそう珍しい事でもない。けれどどうしてだろう。普段ならばこれで幾許かは紛れるというのに、先のパスタの数多にも上る試作で十分胃は満たされたというのに。何故だろう。今この時ばかりは、無性に。…不意に、荒く真白を穢す腕をひたと止め)
――お腹、すいた。
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