ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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2つ目の角を曲がって東に向かって走る頃にはもうほとんど日没に近かった。
「もう少しだ。」
と男は”女医”と銀座の女を励ました。今は女の姿をしている”女医”も元々は男性なので疲れてはいるのもののまだ若干の体力は残っているが、銀座の女はもう息が切れてきた。
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・。ちょ、ちょっと待って。あたしもうダメ。ちょっと休ませて。」
「・・・あたいも休ませてよ・・・。」
男は周囲のビル影を見回した。数体のゾンビがこちらを伺っている。
「『もう少し』って、はあ・・・はあ・・・はあ・・・。あとどのくらい?」
「まあ・・・大体2km位だな。ゾンビがこっちを見ている。休んでるヒマはないぜ!」
「2km!?」
”女医”と銀座の女は同時に声を上げて驚いた。
「・・・あんたさぁ、あんたは何ともないかも知れないけど、日が沈むまでにあと2kmもあたい等が走れると思う?」
「はあ・・・はあ・・・はあ・・・。あたし最悪。もう無理!」
『しょうがないなぁ・・・。』
男はもう一度周りを見回した。ゾンビの数が増えているが、街路灯はもう灯っていた。
「せめてあの街路灯の下まで何とかならないか?」
3人は街路灯の下まで歩き、女2人はそこに越を降ろした。男は抱えていた女を降ろして、灯りは点いているが誰もいないコンビニの方へ向かった。男はコンビニでジュースやビールなどの飲料や明日までは保つであろう惣菜をバスケットにかきこんで、会計を済まさずに出てきた。
「ちょっとあんた、『堂々と万引きしてくる』って、どういうつもり?もう!」
”女医”はパンツの後ろのポケットから財布を出そうとしたが、当然院内PHSとICカードしか持ってきていない。
「『ゾンビ店員』にカネを払う必要はないさ。しかもいないしな。」
病院周辺の街全体がゾンビ化しているのだ。仮に財布を出しても意味はない。”女医”はバスケットの中から冷えたスポーツ飲料を取り出してキャップをひねり、銀座の女は缶ビールを開けた。男はウーロン茶のペットボトルを手にとって肩から降ろした女の頬にポンポンと軽く当てた。女は目を開け顔を上げた。
「俺は気付いてたよ。飲みな。ハーブティーじゃないけど。」
『・・・気付いてたんだ。』
太陽は沈み西の空だけが赤く染まっていた。
「3人ともこの街路灯から絶対に動くなよ。コンビニもダメだ。もし店が停電したらゾンビに囲まれる。先生、この子を頼む。俺は1人で行く。」
「ちょっと!あたし達を置いてどこへ行くのよ?」
「・・・I’LL BE BACK(また来る)」
男は東に向かって走って行った。重いバズーカ砲を抱えた人間とは思えないような猛スピードで。
「先生。あいつ本当にターミネーターじゃないの?」
「さあ・・・。あたいにも分からない。」
数分後ドゴーンというバズーカ砲の発射音とビルが崩れる音が鳴り響いた。
「・・・ターミネーター以上の化け物かも知れないよ。」
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