ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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「で、あんたの家はここからどの位かかるの?」
”女医”は男に問うた。
男は
「距離的には歩いても日が沈むまでには家に着くが、実際には走り続けてもギリギリセーフかどうかってところだな。」
と答えた。
「じゃあ歩いて行けばいいじゃない。何で走るのよ?」
と、銀座の女は反論した。
男は
「まっすぐ俺んちに向かうとビルの影が多いからゾンビを警戒しなくちゃならないし、場合によっては今みたいに武器が必要になる。だが今俺たちが使える武器はこのバズーカだけだ。ゾンビをビルごとバズーカで吹っ飛ばすと、ビルの残骸が病院への帰り道をふさいでしまう。ゾンビを避けながら俺んちに行くには、太陽の光を浴びながら西に向かってカタカナのコの字を逆になぞるみたいに遠回りするしかない。」
と説明し、”女医”と銀座の女の足元を見た。”女医”は院内用パンプスだが、銀座の女が履いているのはブランド物のハイヒールだ。
「おねーさん、そのハイヒールじゃ走りきれないな。足もハイヒールももたない。」
「じゃあたしに『裸足で走れ!』て言うの?冗談じゃないわ。」
二人のやり取りを見ていた”女医”は、女に持たせている拳銃の銃身を白衣の袖で巻いてつかんだ。
「ちょ、ちょっと先生!あたしを撃つつもり?」
「撃てる持ち方に見える?早くヒールを脱いで!時間がないわ!」
銀座の女がしぶしぶハイヒールを脱ぐと”女医”は拳銃の銃床でハイヒールのかかとを叩き折った。
「即席パンプスの出来上がり」と”女医”。
「・・・このヒール、高かったのよ、もう!」とふてくされる銀座の女。
男は叫んだ。
「じゃ俺についてきな。マジで時間がない!」
3人は西に向かって走り出した。
”女医”は走りながら男に問うた。
「あんた、その子と武器を担いで走ってるけど、重くないの?」
「この子に撃たれる前はバズーカが少し重い程度だったが今は何ともないな。それが何か?」
と答えた。
「いい気なものよねぇ、みんな走ってる時に好きな男に担がれてぐーぐー寝てるんだから。あたし最悪。」
と銀座の女はぼやく。
”女医”は走りながら考えた。
『HIVとAKの相互作用だけでは急激な体力増加はあり得ない。この男にはウィルス感染以外にも何かある。』
最初の角を曲がる頃には、太陽の半分が西に沈んでいた。
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