赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>ユニコーン
…そりゃ良い(欲しがっていると思ったから渡した。まさか自分が勘違いをしているなどとは思わず、こちらも相手も予想外であれば、ふたりの間に何とも言えない沈黙が一瞬流れて。しかし、そんな微妙な空気も続く彼の提案を聞いた瞬間あっと言う間に溶けてなくなってしまった。既にいつ腹の虫が鳴いてもおかしくない程度には空腹の状態、厨房へ連れて行ってやるというその提案を断る理由など何一つ見当たらず。ここに来て初めて口にした相手の言葉に対する前向きな返事、それほどまでに食べ物と言うものは絶大な威力をもつらしい。やがてそう時間をかける事もなく目的地へと到着すると、普段城に立ち入る機会など無い生活を送っていただけに、見慣れない城そのものの姿や中に入ってからの様子をしげしげと眺めた。壮大な城の構え、丁寧に作り込まれた内装、この国を治める女王の居城と言うだけあって自ずと醸し出される威厳――こんな場所に慣れない身としてはあまり居心地の良い場所ではなく、手招く相手の案内に素直に従って。厨房に入ってからも、一般家庭のキッチンなどとは比べ物にならない広さと設備、当然と言えば当然なのだがこんな場所で作る食事はさぞかし美味いのだろうと想像した。そしてその想像を裏付けたのは、厨房の中に漂う匂い。相手の言うライオンと言う名前は、先程話に出ていた見た目の怖いコックの事だろうかと、がらんとして静かな厨房内を見回しながら匂いの元を探っていたところで相手が持ってきた籠に目を遣ると「美味そうだな」と素直に一言。言われた通りに蛇口を捻って手を洗いつつ、ふと顔だけで相手の方を振り返ったかと思うと「…お前、案外世話焼きだな。そんな風に見えねぇけど」などと、悪意はないが些か失礼な言葉を口にして。)
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