赤の女王 2017-10-15 11:00:59 |
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>侯爵夫人
不思議の、国……そうか、そうだな。(出会ってから幾度となく彼が口にした単語をぽつりと唱える。先程までは戯れ言で済ませてしまおうとしたそれは、もはや直視するしかない。現在地は依然として分からない。恐らく、イタリア国内ですらない。彼の言葉を信じるなら不思議の国だがはてさて。周囲を覆う薔薇の生垣と、前方に聳え立つ城、そして傍らの小柄な男性の姿を順繰りに見やった後、心の中で小さくカウントダウンを始める。一秒、二秒、三秒。親と家を失った幼少期から変わらない悪癖とも呼べる体に染み着いた習性は、生きていく上で手放せない動物染みた直感。きっかり十秒数えたところで、タイミングよく此方に差し出された掌に、唇に緩やかな弧を描かせながら快く握手に応じて、自らの名を名乗り。現状と目の前の相手を受け入れてしまえば些細な疑惑はたちどころに成りを潜め、堂々たる立ち振舞いに先程までの動揺は一切見受けられず。まだまだ疑問は尽きないが、城とやらに案内する道すがら、お喋りが嫌いではないらしい彼に追々問い掛けるとして、ひとまずはこの不思議な出会いに感謝を)オレはレオナルド。よろしく、侯爵さん。……ふ、あなたに会えて良かった。
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