主 2017-01-21 16:19:02 |
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_世界観_
『 これから、もうこの国からは出られない 』
お父さんが、お父さんのお父さんとお母さんに教えて貰ったのは、その一言だけだった。
その前、随分とワイドショーやニュースが盛り上がった。 なにか色々話しているようだけど、すぐにお父さんにテレビの電源を消されてしまった。
気になって翌日、学校で友達に聞いてみたけど、友達の家もそうだったらしい。 先生にそのことを話すと、その話をするな、って怒られた。
そんな不思議な出来事から一週間くらい経ってからだった。
僕は元々海外のことがすごく好きだったし、なにが起きたのか全く分からなかった。 その時はまだ小学生だったし…
今になってから分かったことだけど、どうやらテロや移民問題のために、世界は"鎖国"を行ったらしい。 貿易とかは続いているようだけど、今はどうか分からない。もう時間が経って、完全に情報は遮断されてしまったから…
…僕は、ある日お父さんがふと話したその事実に物凄く興味を惹かれたんだ。
僕の世界はこのアメリカ、っていう国、ただひとつだけだった。…でも、この世界にはあの何百も国があるらしい。僕達の話さない言葉を話す人だって、食べ物だって、たくさんあるらしい。
それが、ずいぶん前の話。
"海外"のことが気になっていても立ってもいられなくて、図書館や、知る限りの知人に頼って調べてみたけど、お父さんが話す以上の情報は得られなかった。
もしかして、お父さん得意のジョークだったのかな…? そんな風に思いながら、一年前、僕は家に帰った。
いつもの習慣で、ポストを開いたら、その中には薄ピンク色の封筒が入ってた。宛名は僕。 僕が最近返事が来るような手紙を送ったのは一人だけで、しかも男だったけど、その封筒はピンク色だし、宛先のアルファベットは歪だった。
…で、今日。
僕は今、"ニホン"っていう国に来てる。
結論を話すと、あの手紙は男友達に送ったはずの手紙が"ニホン"の女の子のところに届いていて、それに女の子が返事をしてくれたんだ。
もともと遠く離れた友達に宛てたものだったから、地元のことについて話した内容から、アメリカってどんなところ、とか…僕について、その子は色んなことを聞いてきた。
もちろん、ニホンの紹介もしてくれた。ビルが沢山あって、コミックとかゲームとか、いっぱいあるらしい。
そんな手紙が来て、僕もいてもたってもいられなくて…それから、沢山文通をした。 最初は誤送だったけど、どうやら彼女が住んでいるのは港町らしく、僕も港町に住んでいたから…僕達の街を繋ぐ船に手紙を紛れ込ませて、何度かやり取りした。
僕とあの子は、ある計画を立てた。
お互いの友達を連れて、ニホンに"海外旅行"をする、っていう計画。
もちろん犯罪だし、とても危険だった。 …でも、僕達の好奇心と…恋心は、誰にも止められるものじゃなかったんだ。
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