主 2016-12-19 00:22:19 ID:bc0a360b7 |
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*❀٭ 前置き *❀٭
昔々、まだ世が戦国真っ只中だった頃。『陽』と呼ばれる人間達の世界では毎度毎度常日頃から戦だ野盗だと物騒な事柄ばかり続いていた。大地は荒れ、血に塗れ廃れた村や町は数知れず。日照りや飢饉も続き、人々の心には必然と闇が出来る。
その心の闇を糧として生きる生き物達にとって、人間の心に出来た闇は極上の餌。人間は知性が高い分、腹の中ではドロドロとした深い闇を抱えてしまう。
「妖(妖怪)」と呼ばれる者達はそれを代表する生き物達である。普通、妖怪達は『陰』の世界で暮らしている為、滅多に人前に姿を見せない。危害を加える妖怪も数える程度であった。
しかし、世は戦国。人の心に巣食う闇は、それはそれは膨大な量となる。妖怪達はその甘くとろりとした闇を喰らうことで凶暴化してしまった。
子を攫い、人を喰らい、殺戮を楽しむ妖怪達。『陽』の世界では人間達が引き起こす戦が。『陰』の世界では妖怪達が引き起こす殺戮が。人々は更に闇を抱え、最悪な悪循環を引き起こしていたのである。
その様を哀しんだ大妖怪「羽衣狐(九尾狐)」は妖怪達と人間達の間に"見えない壁"を創り出し、『陽』と『陰』を分断した。
当然、妖怪達は怒り狂い、羽衣狐が居る京へと踏み込んだ。その数、数百万程。『陰』の世界にて天位を持つ羽衣狐に数で勝とうと目論んだのである。戦いは京の地にて七日七晩続けられた。しかし、結果は妖怪達の惨敗。全く歯が立たず、妖怪達は元居た場所への帰還を余儀なくされただけではなく、大半の妖怪達は力を失ってしまった。
そんなある日、羽衣狐の腹には二人の子が宿っていることが判った。羽衣狐は日々成長する我が子を心から愛し、そして羽衣狐の傍に控えていた側近達も羽衣狐とその子らを守り抜いた。
しかし、子らが生まれる日に羽衣狐は亡くなってしまった。妖怪達との戦いにより、二人目が生まれたと同時に力尽きてしまったのである。空は泣き、羽衣狐の死を側近達はとても哀しんだ。
これから語られるのは、その羽衣狐の子供達が成長してからのお話。
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