風人 2016-11-02 05:15:58 |
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「お恥ずかしい話、ここんところろくに盗みもしていなくて、だから、それこそ一攫千金を狙って別荘なんかに入ってみたんですが、金目のものはないし、おまけにドジ踏んで捕まっちゃうし。そのとき、ふっと思ったんです。別荘で捕まったんなら、そのまま刑務所(ベッソウ)入っちゃおうかなぁって。そりゃあ冬は寒いけど、とりあえず三食は食わせてもらえるし、ホームレスになるよりはマシかなって。だから今度に限っては嘘つくのはやめて、全部素直に吐いてみようかなって思いました。ほんと、申し訳ありませんでした」
右京の同情でも引こうと思ったのか、槙原はどこかしんみりした口調で頭を下げた。
「またもや説得力のあるお答えですねえ」
そんな戦術は当然ながら右京には通用しない。
「だって本当のことですから」
槙原は思惑が外れたことに戸惑った。
「ですが、いまのはちょっと無理が感じられますね」
「え?」
「仮にこのままあなたが起訴すれば、窃盗未遂とはいえ常習犯でもあり、懲役三年から五年の実刑判決が出る可能性が高いと思いますよ。ひと冬では 済みませんねえ」
「あ、そうだったんですか?」
まるで他人事のようである。
「『そうだったんですか?』。ご存じなんでしょ。なぜならば、あなたはプロなんですから」
「プロ」という部分に独特のニュアンスをこめた。
相棒シーズン5(上)/杉下右京、槙原/戸山田雅司
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