【HQ】岩及　(非募)

やっぱお茶が一番だな。
(お茶にストローなんて刺さず、蓋を開ければそのまま飲み。相手の分も少しは残しとかないと言うことは分かっていたので一気には飲まず、口から紙コップを離そうとした瞬間、相手から予想もしなかった問い掛けにお茶が喉の変な気管に入り、「げほっ、ゴホッ」とむせて。)

岩ちゃん大丈夫!?…っていうか、そういうピュアなリアクションやめてよ！
(突然噎せた相手にぎょっとしたように身を竦ませて、一応は心配しつつも先程までと打って変わって相手らしい反応をされれば「なんか俺が汚れてるみたいじゃん」と呟き。漸く腹を決めたらしくストローを咥えれば、羞恥からか相手とは目を合わせずに一口啜って。

う、うるせぇ。
(先程から恥ずかしいことの連続で顔を伏せ。相手の問い掛けに返事をしていないと気付けば顔を上げ、「男同士だしいちいちんな事言ってられるか。」と、先程の自分とは思えないような回答をして。あくまでも平常心を保とうと普段通りに、と内心で呟き。)

まあ、そうなんだけどさ…。
(自分ばかりが意識してしまうこの状況が虚しく思えて、少し力なく呟いて。思い付く限りの話題が尽きてしまえばポテトをつまんで、折角二人きりで過ごせる時間だというのに言いようのない寂しさすら感じながら時折シェイクを啜り。

(話題が尽きれば話題を提供するのが下手な自分はこの微妙な空気に耐えれずに、話題、話題と脳内で考え。ふと思い付いた疑問に相手に尋ねようか一瞬迷うも、このまま沈黙が続くよりはマシだと考え、「お前、今彼女いんの。」と訊き。)

…いないよ。
(正確に言えば振られたのだが、わざわざそこまで言わずともいいだろうと判断して短く答え。しかし何故このタイミングでそのような事が気になったのかが分からず、「それ知ってどうすんの」と呆れ顔で肩をすくめて。

あ、嗚呼そうか。
(てっきり相手の事だから彼女くらい居るだろうと予想していた為、いざいないと言われれば返事に困り。少し自分の問い掛けに後悔しては、「ただ気になっただけだ。」と、目を逸らしつつ答えて。)

珍しいね？岩ちゃんから訊いてくるなんてさ。
(訊かれていなくとも自ら話す事はしばしばあるが、相手が自分の恋愛事情に関心を示す事は珍しく、意外そうに目を丸くしてぽつりと零し。ストローの袋を指先で弄びながら、目を逸らしてしまう相手の真意を探るべくじっと見つめて。

別に、…
(目を逸らしたまま相手と目を合わせず。相手に彼女がいないと知れば驚いたと同時に何処か安心している自分がいて、そんな事思うくせに相手に気持ちを伝えられない自分が情けなくなり。)

あーっ!!分かった！
(一つだけ可能性があるとすればこれだろう、とハッとしたような表情を浮かべれば、自信満々に人差し指を立てながら「自分がモテないからって僻みは良くないよ岩ちゃん！」と諭すような口調で告げて。なるべくいつも通りの雰囲気に戻そうとしているのか、あっけらかんとした笑顔で。

(相手が声をあげれば肩を上げ、変な汗が滲み出て。察したのだろうかと相手をちらりと見ればふざけた事を自信満々に言う相手を真顔で数秒見つめ、少し動揺した自分が馬鹿らしくなり「おいお前後で殴らせろ。」と笑顔を向ける相手に低い声音で告げ。)

ごめんごめん！怒んないでよ！
(結局何故このような話題を相手が選んだのかは分からず仕舞いだが、下手に追及して今の居心地の良い関係が壊れるくらいなら訊かない方がいいだろう。低くなった声音にびくりと肩を震わせては、申し訳無さそうな表情を作りながらも大して反省していないような軽い口調で謝り。

ったく……
(恐らく反省していないであろう相手が一応の謝罪の言葉を口にすれば小さく溜め息を吐いて机に頬杖をつき。「別にモテなくて良いっての。」と、ふて腐れた口調で言えばもうそんなのは慣れっこの様で、特に相手を責め立てるような事は言わずまた直ぐに目を逸らしてしまい。)

なんで？岩ちゃん彼女欲しくないの??
(意外そうに目を瞬かせてはポテトをつまみ、僅かに首を傾げて遠慮せずに尋ね。もしもそうなのだとすれば此方にとっては好都合な事この上ないが、極々普通の男子高校生である相手に限ってそんな事はあり得ないだろうと思い、何か別の理由があるのだろうと勘繰って。

別に、欲しくないわけでもねぇけどな…
(彼女なんて要らないと言えば嘘になるため、尋ねられた事を曖昧に返し。だが自分は別にモテなくても良いと思っているのは事実で、相手から嫌われたりしなければそれで十分と考えており。そんな事を相手がいる前で考えてる自分に羞恥心を覚え少し頬を赤らめて。)

ふぅん…。
(優しく面倒見の良い相手ならば彼女に立候補したがる女子も少なくないはずだが、それを親切に教えてしまっては自らの首を絞めるだけであるのは目に見えているため、敢えて何も言わず相槌を打つだけにとどめ。頬を赤らめる相手を見れば可愛いなぁ、などと場違いな事を思ってしまい、何を思ったか「岩ちゃん、あーん」という言葉と共にポテト一本を相手の口元に持って行き。

なっ…
(相手の言動に目を丸くさせ更に頬を赤らめれば「な、何だ＊＊ェ!!」と動揺しているのを隠すために少し強気で言えば相手からポテトを奪い自分の手で食べてしまい。また相手が自分をからかう為の言動なんだろうと内心で納得して。)

何って……彼女が欲しくてもできない可哀想な岩ちゃんのために、及川さんがあーんしてあげたんだけど？
(期待以上の反応が見られれば楽しそうに答えて、頬杖をついてシェイクを啜り。相手の頬が益々赤らんだのは照れ臭さからなのか怒りからなのか、何れにせよ普段とは違った一面を見られたので嬉しいらしく頬を緩ませて。

うるせぇ!!やっぱお前後で殴る!!
(相手のペースに完全に乗せられているのが悔しく唇を噛み締めては相手を軽く睨み付け怒鳴り。冷房が効いていて外より断然涼しいはずの室内で汗が止まらず、楽しそうにしている相手に小さく舌打ちをすれば、いつか仕返ししてやると心に誓い。)

暴力反対!!落ち着いて！
(再び物騒な言葉を吐かれれば慌てて宥めようとし。流れなんかお構いなし、といった調子であくまでマイペースに指先に付いた塩を紙ナプキンで拭き取ってから、相手の紙コップを指差して「お茶、一口ちょうだい？」と。間接キスについてはもう触れないつもりらしく、特に恥じらう事も無く尋ねて。