主 2013-06-22 18:50:00 |
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…そっか。やっぱ、そんなもんか。…そっか。
(そうかもしれないと、前もって自分で予測していたにも関わらず相手の口から零れた"知らない"の一言が胸に重く響き、思わず震えそうになる吐息を堪えゆっくりと息を吐き出しながら自分を納得させるように声を漏らし。二人だけの秘密ということは誰にも知られない優越感を得る代償にその関係が酷く脆くなるもの、口外出来ない関係を結んだ時点でその繋がりの希薄さ位分かっていたはずなのにいざ今の状況に立たされると頭はちゃんと回っているはずなのに心がついていかず、呟きを漏らしたきり動かなくなっていた体を乱暴に揺さぶる手に漸くはっと気づき。もう優しい相手の手しか、出会ったばかりの頃の粗暴な扱いなど思い出せない程染みついた記憶すら壊していくような荒い手つきで胸倉をつかまれれば自然と相手と目を合わせることとなり。恋の甘さも愛情の熱も感じない相手の瞳に思わず息を飲んでから今にも泣きだしてしまいそうなほど震える心を静め胸倉をつかむ相手の手にそっと片手を重ねると最後の問いを口にして。)
――棗、は…棗のことも、覚えてないのか…?
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