自分の傍から離れないのは何故？〆

し、仕事…楽しい、ですか？
(自分から他人に声を掛けるなんて慣れないせいか、ブラック企業のような質問になってしまったし声も上擦っていたが精一杯の勇気を振り絞ってそう質問する。もしもこれで良くない回答が返ってくれば、父親に報告しなければならない…なんて考えながら相手の答えを待って)

…頼られるのは、悪くはない、かな？(相手からの質問の意図が読み取れず一瞬思考が停止してしまい。しかし、それもすぐに再び思考が回れば何故相手にそれを言わなくては、と考え至るも何か返さないといけない、そう思って少し笑みを顔に張り付けながらそう返し。しかしふとせっかくの休み時間なのだからと思い直せば「申し訳ないけど…俺はこれから飯なんだ…」と早く食事を摂りたい、その思いから相手に背を向けようと踵を返そうとし)

あ、そう…ですか…時間を取らせてすみません。
(相手に迷惑がられているのがなんとなく分かったのか、目に見えて落ち込んだような表情を浮かべると一旦はすごすごとそのまま引き下がろうとするが、はっと気付いたように相手の方に駆け寄っては「あ、じゃあ…昼食、奢りますよ！」と尚も引き下がろうと)

え、あ…まぁ、奢って頂ける、なら…(相手の思いがけない食い下がりに少し驚きつつも、生活に必要な支払いを済ませ、食費分一部を貯蓄に何とか回せば残りは小遣い…なのだが、そんなものは殆ど無く。基本外食や昼食代は小遣いから出しているためそれも地味に辛いもので。だからこそ相手からの提案は魅力的で、何故ここまで自分に、とは思いつつも抗うことはせず相手からの提案を受け入れて)

良かった…！何食べますか？
(相手が頷いてくれたことに先程まで落ち込んでいた表情を一気にぱあっと明るくし、尻尾があれば振りそうな勢いで相手の前を歩いて社食のメニューに目を輝かせる。「カレーとかです？あっ、こっちのもいいなあ…！」奢ると言いつつ半ば自分が食べたいものを探しているようで)

そう、ですね。カレーを頂こう、かな(相手に連れられ目を輝かせる相手のその姿はまるで新入社員の頃の自分のようで少し懐かしみつつも、自分は簡単であり手早くも食べれるカレーにする、と相手に伝え)

((こんにちは

カレーですね、分かりました！
（相手の注文を聞くと急いで注文を取りに行き、カツカレーと通常のカレーを片手ずつに持ってちょうど空いていた中央の机を陣取って「ほら、食べましょうよ！」と相手を笑顔で誘って）

あ、あぁ。有難う…(相手のまるで忠犬を思わせる程の行動力に目を丸くしつつ相手に誘われるままに中央の机に隣同士で座り。ここ最近は空いてたとしても中央の席を利用するなんて殆ど無かったのに、なんて何気なく考えつつ、ふと周囲の視線が相手に、そしてその隣にいる自分へと向けられている事に気付いて。確かに相手の顔立ちは少し童顔のように見受けられ人当たりのよさもあるその顔立ちは視線を向けられても仕方ない。それに比べ自分には誇れるものはなく、更には有りもしない恋愛対象に関する噂まで立てられる始末…そんな自分が相手の隣にいて良いのか、と少しだけ萎縮してしまい)

…あれ、食べないんですか？
（かく言う本人はもう普通のカレーを口に詰め込み始めており、相手がまだ食べていないことに気付くと子供のように口の端にカレーを付けながらこてんと首を傾げる。自分に注がれる周りの目線など気にもなっていないようで、相手に笑顔を向けていて）

っあ、あぁ…(相手からの声にハッとなりふとそちらを見やれば口の端にカレールーがついたままあどけない笑顔を此方に向けてくる相手の姿があり。その無垢な笑顔に思わず先ほどまでの緊張が僅かばかりに解け、スプーンを手に取り何故か自分の目の前にあるカツカレーを食べ始め。誰かと食べる食事、入社したての頃には先輩に奢って貰ったり同期と食べに行ったりしめいたが、もうここ数年はそんなこと一度も無かったよな、そんな思いが頭をよぎり)

美味しいですね、ここのカレー！
（純粋な瞳を輝かせ、相手を見つめるとようやく周囲に見られていることに気付いたか急に顔を赤くして縮こまり、「…あ、はしゃぎすぎ…ですかね？」と目に見えて落ち込んだような様子を見せながらそう問いかけて）

いや、はしゃぎすぎ、って訳じゃ…でも、ここのカレーは確かに美味しいですよね(相手の純粋な瞳にどう返そうか迷っていたタイミングでどうやらあいても気付いたようで。顔を赤くしたり目に見えて落ち込んだり、感情の起伏の激しい相手の様子にどう声をかければいいか分からず自分なりの慰めの言葉を伝え相手の先程のカレーに対する感想への返答を告げて。そして先程から付きっぱなしでは相手が不憫だと思えば自分の口元を指差しながら「あと、ここ…ついてます」と相手に教えて)

あ、ホントだ…
(指摘されてナプキンで口元を拭うと確かにそこには茶色いシミ。相手はそう言ってくれるものの確かに年甲斐もなくはしゃぎすぎたのを反省しつつ、初対面で馴れ馴れしすぎたのかな…と思って)

でも、ここのカレー本当に旨いんで、そうなっちゃうの分かるんだよなぁ(相手の何処か反省してる様子の反応に少しだけクスリと笑えば無意識のうちにいつの間にかしなくなっていた心からの笑顔を浮かべて呟いて)

そう、そうですよね！？
(相手の同調の言葉に乗っかりつつも笑顔に一瞬見とれる。誤魔化すようにカレーを口に掻き込み)

…？(相手の反応が自分に見とれたものだと分からず不思議そうにしていたが、あまり気にする必要は無さそうかと自分も久しぶりのゆったりとした空気を感じつつカツカレーを食べていて。しかし、あどけない相手と隣、しかも中央の席であることはある程度注目を浴びることは必須で…「アイツ、あの社員に目を付けたのか？」「隣の子も可愛そうにな、あの男好きの妹尾に目をつけられて」とヒソヒソとした声が聞こえてくれば、またか、と思いこそすれどそれを否定するつもりもなく気にしてないと言わんばかりにカツカレーを食べていて)

…む…
(カレーを食べながら嫌でも耳に入ってくる、ヒソヒソとした相手の陰口。聞いていて気分の良いものではないし、思わず顔を顰めて)

…今日はご一緒しましたけど、無理しなくて、良いですからね？(男好きな妹尾…その噂が立ったのは課長から指名されて営業に行き、そのまま契約を締結した先の部長が同性愛者だからで。勿論、現在唯一自分が担当している案件で有るため手放すことなく今でも定期的に商品説明や商品な関する伺いに行ったりしていて。しかし、それが上司の課長と部長、2名による会社を去らせるための策略だとは未だ気付いてなくて。いつからか部署内だけでなく他部署の一部からもそう言われてきていて。流石に相手まで変な目で見られる訳にもいかないよなぁ、と思いつつ相手にそう小さな声で伝えて。その声色は陰口を受けてる張本人であるにも関わらずその陰口への無関心さと相手を慮る気持ちが入り交じっており)

そんな…無理なんてしてないですよ！
(自分でも気付かないうちに椅子を立ち上がって、そう言って相手の手を握っていた。そこですぐに気付いて「あっ、ごめんなさい…！」ぱっと手を離してまた椅子に座り)