《 探し人：夢野幻太郎 》

君待つと、我が恋ひをれば、我が宿の、簾動かし、秋の風吹く…まさに僕の現状のようだ。
―――何です、その顔。大方また素っ頓狂なことを言い出したとでも思ってるんでしょう。

与太話はさておき、本題に入りましょうか。紙と墨も惜しいですしね。
あなたが捜している「夢野幻太郎」は間違いなく僕の事でしょう。鍵にも心当たりがあります。
しかしながらそれだけでは決定打に欠けるかもしれませんので、そうですねぇ……此方からは今日の夕飯は焼き魚にするつもりだった、とでも返しておきましょう。
ええ、猫は魚が大好物と昔から相場が決まっていますから。脂の乗った秋刀魚の塩焼きに大根おろしを添えて差し上げます。

あとは、あなたが案内してくれた場所で、実は小生もあなたのことを捜していまして。
私も男なので、魅力的な誘いには乗らないと男が廃ると言いますか…据え膳食わぬは何とやらとも言いますし。此方も鍵を幾つか挙げていますが、あなたなら直ぐに分かるかと。
君の文を見付ける前なので突っ込みどころもありますが、そこは目を瞑っておくんなまし。

仕切り直して新しく物語を紡ぐでも、心当たりの場所で逢瀬するでも、お前の望むがままに。
さて、どうします？

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