~あの頃の思い出~【〆】

安心しろ、病院じゃない！良いから行くぞ！
(相手が乗り気ではないのは、恐らく話の流れから病院に行くと思っているからだろうという考えに至ると、一際元気な声で上記を述べると、本を読んでいる相手の頭を掴もうと手を伸ばして)

うるせぇっ！そうやっておれを病院に連れてく気だろ
(部屋に入ってきても無視だと自分に言い聞かせ、読書に集中しようと読み続けるもぬっと頭の上から降りてきた手にビクッと肩を跳ねさせながら持っていた本の角で足の甲を叩き、この場をさる為に部屋を出ようと)

ぬぁぁぁ！…っ、待てロー！
(足の甲に走った電撃の様な痛みに思わず叫ぶも、ここだけは譲れないと必死に頭を掴む手を逃げようとする少年に向けて伸ばして『今日は隣町が祭りだろ!?一緒に行こう！』と、つい内緒にして驚かせてやろうと思っていた内容が口から出てしまい)

へっ、祭り…？
(捕まりそうになるというのに相手の口から出た言葉にピタリと足を止め、不思議そうな顔を浮かべては上を見上げて首をかしげ)

あぁ、しまった!!ドジった!!
(相手の表情に、自身が何を言ったのかを理解し頭を抱えて後悔するも、ここまで言ってしまっては仕方ないと心の中で割り切ると、改めて相手と目線を合わせるようにしゃがみ込み『ロー、行こう!!祭りだ!!』と不器用に微笑んで見せて)

…少しだけだからな
(目の前の不気味な微笑みを見て怖そうに目を開け、たまには祭りもいいかもと思い仕方なく付き合うことに)

何言ってるんだよ!!少しと言わず、楽しもうぜ!!な??
(仕方なくという感じはあったが了承を得た事に心が踊り、ついついはしゃぎ気味に答えると一目散に部屋を出ようとして部屋のドア付近で盛大に転び)

まずあんたが落ち着けよ！
(楽しめよと言われてもドアの前で何もな所で盛大にコケる人物が居てはと、大きく溜息をつき「早く起きろよ、邪魔だ｣と起きがらさせようと上着のフードを引っ張り)

あ、あはは…
(自身でも気付かない程に浮かれていたのかと少し恥ずかしい気持ちになりながら、少年の助けもあり何とか起き上がると、改めて相手を見つめ｢ほら、行くぞ??｣と手を繋ごうと差し出して)

誰が繋ぐもんか
(差し出された手をしばらく見つめたあと勢いよく大きな手を叩き、相手より先に屋敷を出ていき「おい、早くしねぇーと他の奴らにバレるぞ」今ごろ痛がってるであろう人物に声をかけ)

いてっ…ったく、可愛くない奴だ…
(弾かれた手をスリスリと撫でて痛みを引くのを待つと、少しでも乗り気になってくれただけで進歩かと心の中で苦笑しながら、自身よりも何倍も小さい相手の一歩後ろをついていきながら、ふと｢ロー、お前祭りは行った事ある…よな??｣と頭に浮かんだ疑問をそのまま口にして)

あるよ、父様たちと行ってた
(隣町が祭りだからなのかいつもより人が多く、人混みの中でも相手を見失うことなく後ろを振り向きそういえばここに来る前にも行ってたと思い出し)

そっか…家族とな…
(人通りは思った以上に多く、小さな相手を見失う事の無い場所を確保しつつ進みながら、何か思う所があるのかボソボソと小さな声で上記を呟くと、目の端にアイスを売っている出店を見つけ｢おっ、ロー見てみろ!!アイスだ!!買っていこう!!｣と人混みに飲まれないよう腕を伸ばし捕まる様に促して)

うわっ！なんだよ、急に…
(ザワザワと周りの通行人で声が聞き取りづらく、相手が何を言っているのか分からず急に掴まれると驚くように足をばたつかせ)

ほら、アイスが売ってるんだ!!好きなの選べ!!
(じたばたと動く相手にお構い無しにずんずんと進んで行き、目的地であるアイスの出店の前でゆっくりと下に下ろすと、そこまで並んでいない列の最後尾へと並びながら｢好きな味とか無いのか??｣と視線だけ隣にいる相手へと投げかけて)

おい、離せよ！
(殴るのも蹴るのも短い手足では何も出来ず、とうとう出店の列へと連れてこさせられ。いろんな味のアイスが売ってるが特に食べたいとも思わず、自分たちの前にいる兄妹が目に入り「…好きな味なんてねぇーよ」と列から抜け出し)

おい、ロー!!せっかくの祭りなんだぞ??もっと楽しもうぜ!!
(やはり自分は子供の気を引く事は苦手なのか、列から離れて行ってしまった相手の背中を少し悲しげに見つめると、気を取り直す様に元気な声で話しかけると｢お、あっちには音楽隊の発表があるみたいだ!!あっちにするか??｣と、目に入ったものを片っ端から言って、少しでも興味のあるものがあればと願い)

…おれ、もう帰る
(楽しそうな家族の姿を見ていると昔の頃を思い出し、 泣きそうになるのを悟られまいとぐっと堪えアジトのある方へと歩きだし)

お、おい待てロー!!どうしたんだ急に??
(先程から少し様子が変わってしまった相手に何かしてしまっただろうかと不安になると、慌てて後を追いかけて｢祭りは楽しくなかったか??｣と元気のなくなった小さな声で問うて)

別に、コラさんには関係ない
(忘れようと思っていた記憶が頭をよぎり、思い出しそうとするだけ苦しくなり。後ろから着いてくる声に見向きもせず歩くスピードをはやめ)