ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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”女医”たち4人は37番出入り口から院外へ出た。太陽は西に沈み始め、”女医”たちの影は分刻みで東に伸びていた。ゾンビで荒れた街とは思えない静けさだけがあった。”女医”は本来の目的地である39番出入り口の方を向いた。
『ここから200mくらいはあるわね・・・。』
だが銀座の女は言う。
「先生。39番出入り口はもうダメよ。入っても37番出入り口と同じ袋小路よ。」
「何でダ・・・?」
”女医”が問いかけるまもなく”女医”は男に左に押し倒された。
「ちょ・・・?何・・・?」
「撃て!」
銀座の女も突然のことで何が起きたのか分からなかったが、37番出入り口で言われたとおりに女の手に握らせていた拳銃の引き金を引いた。女が握っていた拳銃はオートマチックである。バンという音と共に薬きょうが右に飛び出た時には銀座の女も驚いた。弾丸は”女医”に噛みつこうとしたゾンビの右脚に当たったが、それでもゾンビは”女医”に近づいてくる。”女医”は顔を引きつらせたが男は冷静に
「撃ちまくれ!」
と叫んだ。銀座の女とて、実弾の込められた本物の拳銃を撃つのは初めてだ。目を硬くつむりながら引き金を引き続けた。バンバンバンバンっと、銀座の女が覚えている射撃音は4回で、後は覚えていないが、気付いたときにはカチンカチンカチンという、空撃ちの虚しい音しか聞こえない。男が
「おねーさん、ゾンビはもう死んだよ。」
と言うので、恐る恐る顔を上げるとそこには、腹や胸、肩、頭の一部が銃弾でえぐれたゾンビが倒れていた。男は
「ふぅ・・・ゾンビ1体でマガジン(弾倉)が空になった。病院のすぐそばでバズーカは撃てないしな。」
と言う。銀座の女は力が抜けて何も考えられない。男は続けて
「先生。先生ならこういうときどうする?」
と尋ねた。”女医”は立ち上がって、監視カメラの死角にいて映っていなかったゾンビの死体を確認し、埃を払いながら
「・・・そうね、39番出入り口まで走りきるか、病棟に戻って考え直すしかないわね。」
と答えた。しかし落ち着きを取り戻した銀座の女は言う。
「31番から39番の奇数番出入り口は全部防火扉で閉じられたわ。建物の防火設備は1カ所の火災感知で1ブロック全部が作動する仕組みになってるのよ。」
”女医”は
「・・・じゃあ、29番か41番へ・・・。」
と答えるが、男は
「もう間に合わないな。日が沈み始めた。」
と言う。男は続ける。
「ゾンビが先生を襲ったのは先生の影がゾンビの足元まで伸びていたからだ。29番にしろ41番にしろ、そこまで行くうちに日が暮れる。このままここにいてもだ。夜になったらどこからゾンビが襲いかかってくるか、俺にも予想できない。」
太陽は分刻みでさらに西へ落ちていく。”女医”たちの影はさらに東へ伸びていく。男は提案した。
「『俺んちへ逃げる』てのはどうだい?近くはないがまだ間に合うし、俺んちなら武器は山ほどある。俺んちで明日の日の出まで過ごして、今後どうするか考えるのもアリだぜ。」
”女医”と銀座の女は顔を見合わせて、男の意見に同意した。女はマガジンが空になった拳銃を持ったまま、男に担がれて眠ったままだった。
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