ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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「おらぁ医事課のもんと話すことがないけぇ知らんかったんじゃが、ご結婚おめでとうございますだ。この度はお子さんにも恵まれたそうで・・・。」
NICUの看護師は医事課総合主任に2年遅れた祝辞のあいさつをした。
しかし主任は
「そんなことは今はいい。それより、保育器に何か異常はありませんか?」
と聞きただした。自分の娘がこの病院のNICUの保育器に預けられているのだ。気が気でならない。
NICUの看護師は
「ウヂの保育器は、1つなんぼするんか知らんが、世界最高水準のトップメーカーが開発した最新型の超高気密保育器でズ。カバーを開けん限り、花粉どごろか、PM2.5ですら入らんとです。」
「オランダ製で1台2,500万円だ。そんなことより保育器は大丈夫なのか?」
『ウヂにはこの型の保育器が10台あるっちゃ。ちゅーことは保育器だけで2億5000万円。小児科関連の医療はどごも赤字やっちゅーのに、ウヂの病院は何でそんなに儲かってるんやろか・・・。』
「君!聞いているのか!?」
「は、はい。ほ、保育器はなんともないとです。ばってん・・・サンスが足らんとです。」
「『酸素が足りない』ってどういうことだ?NICU用の酸素なら2週間前に発注したと報告があったぞ。」
「んだ、サンスはいつもの予定通り来てるんじゃが、ゾンビが出るっちゅーて警備が入り口の門ば閉めたさかい、ボンベの業者が病院ん中入れんちゅーて、門の前で停まってるとです。」
「じゃあ早く開けさせろ!」
「そげんこつ言われてもおらぁ~・・・。」
「主任さん、看護婦さんを困らせるっちゅーのはスジ違いじゃねーの?」
2人の話に割って入ってきたのはオトコだ。
「しゅ、主任の奥さんから、こちらの2人がボンベを交換スてくれるっちゅー連絡があったとです。」
「『妻から連絡があった』ということは、君達は感染症隔離病棟の患者だな。何故君達までここにいる?」
「ご主人、今はそんなことより酸素ボンベを交換する方が先です。我々がここにいるいきさつは後で説明します。」
受け答えをしたのはカレシだ。NICUの看護師はほっとした。
「メカモノなら俺たちに任せときな!コイツは大卒で俺の先輩だが、こういうときは俺の助手だ。俺たちに扱えないメカモノはない。」
オトコは得意満面だ。だが主任は問う。
「だがどうやって通用門を開ける?門の開閉は全て警備員室で管理してるんだぞ。」
NICUの看護師は目つきを鋭く光らせながらつぶやいた。
「・・・力仕事をやってくれる人がおるっちゅーんやったら、看護師のおらにもでけることはある。」
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