ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
通報 |
「どう?2人とも消火剤と水シャワーで頭が冷えたかしら?」
”女医”と女は消火剤を払い落とそうとしたが、水で濡れて落ちそうにない。
「あなたはその物騒なもの、さっさとしまいなさいよ!」
銀座の女は、女に怒鳴った。
「いや、その拳銃は撃てない。」
銀座の女の後ろからバズーカを構えた男が言った。
「俺を覚えているかい?」
「う、うん。忘れてないわ。」
「そうこなくっちゃ。お互い自分の生まれも名前も覚えてない。お互いの顔しか分からないんだ。あの時はすまなかったな。謝るよ。」
「ううん、私こそごめんね。もう大丈夫なの?」
「ああ、理性がなくなる寸前で先生に助けられた。本当に元のままなのかどうかは分からないが、一応見た目と頭はあの時のままさ。」
あの時。そう、ゾンビ化した男の腹に女が引き金を引いたときだ。
「あんたらさぁ、久しぶりのご対面は置いといて、2人ともその武器しまいなさいよ。あたいは認めてないよ。」
”女医”がなかなか取れない消火剤を払い落としながら2人に声をかけた。
「俺のバズーカもこの子の拳銃も、今は撃てなくなっている。」
銀座の女はたずねた。
「どういうこと?」
「俺のバズーカもこの子の拳銃も誤発射防止のための『安全装置』がかかったままなんだ。先生に銃口を向けて引き金を引いてもタマは出ない。」
”女医”と銀座の女は顔を見合わせた。
「あんた、どうしてあたいらがここにいるのが分かったの?」
「”女の勘”よ。」
「具体的には?」
「看護婦さんの書いた病院の間取り図。」
「と言うと?」
「あの看護婦さん、この大きな病院の外来しか勤務経験がない。大分疲れてたみたいだし、これだけ大きな病院なら出入り口番号を間違えても無理はないわ。」
「そうだったのね。あたいも『常駐勤務医』だから、決められた通路や出入り口しか分からない。」
「先生が向かうはずの出入り口は、39番よ。」
”女医”は防火扉を開けるため、名札の裏のICカードを持ってセンサーを探した。しかし見当たらない。
「先生。防火扉は火事の時延焼を防ぐために自動的に閉まるの。一度閉まったら開かないわ。」
「あんた、やけに建物に詳しいねぇ。」
「あたしはこう見えても工学部建築学科の出身。銀座の前はゼネコン勤めよ。」
「どうすればいい?」
銀座の女は出入り口を指差した。
「37番出入り口から外へ出るしかない。」
トピック検索 |