ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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「ん?わたくしたち以外にも誰かおられましたかな?」
神父は左右に振り向いた。
「感染・・・え~と何やったっけ、ここ?今はウチ等しかおらへんよぉ~」
「感染症隔離病棟ですよ。ええ、確かにそのはずなんですが・・・。」
神父は立ち上がって、周りを見渡す。確かに3人以外誰もいない。
『・・・お願い、神父さん。私に気付いて!』
看護師は結婚式以来久しぶりに会う神に、正に祈る思いで、神父を見ていた。沈みかけた太陽の西日の光が看護師の涙に反射して神父の目に飛び込んだ。神父が光の方へ目を向けると、看護師が神父を見ていた。
「大丈夫ですか?ご気分は?」
神父は看護師に駆け寄って、背中を起こした。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。ありがとう、神父さん。」
「看護婦さん、非常食食べる?ちょっとしか残ってへんけど。」
大阪の女は非常食と水をを持ってきた。風俗嬢も接客業の1つである。非常食と合わせて水も持ってくるあたりは職業柄、よく心得ている。
看護師は、大阪の女が持ってきた水を一気に飲み干し、少し落ち着いた。
「ありがとう、はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・他のみんなは?」
「みなさん出て行かれました。『先生の後を追いかける』と言っておられました。」
「37番出入り口ね。NICUに電話しなきゃ。」
「看護婦さん、これに座ったら?」
大阪の女が用意したものは、病棟備え付けの車いすだった。看護婦は車いすに座り、大阪の女が車いすを押した。
「はい、エヌアイスー・・・ぁ、NIC、U、でズ。」
「あなた!?私よ!いまそっちに、ここの女性医師と若い女の子が向かっているはずよ!」
「あ~ごっぢば、何でか知らんが火災報知器ば鳴りよる。ばってん、火事は起きとらんけん、心配せんでよか。」
「後から2人を追いかけて男性3人女性1人がそっちに向かってるの。男性のうち1人は大きな武器を持っているわ。」
「あ~いや~そごまで言われてもおらぁ・・・。ちいと待ちんさい。」
NICUの看護師が待合室を見ると男2人が立っていた。カレシとオトコだ。彼らの他にもう1人男が待合室のソファに座っていた。
「ダンスーが3人来ちょるが、あの3人は誰ぞね?」
「私の主人とここの患者2人よ!その2人が酸素ボンベを交換してくれるわ!他の4人は?」
「あ~あの人があんたのダンナかいね~。どごがで見たことあるっちゅ顔と思ったらば・・・。」
「この病院の医事課総合主任よ。で、4人は?」
「4人ちゅ言われても~警報が鳴っで~通路の扉が閉まってしもたさかい、分からへん。」
看護師の息は切れ切れだった。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・主人と電話変わってくれない?」
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