ほのか 2018-02-25 17:46:31 |
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「わたくしも一言よろしいですかな?」
聖書を手にした神父がそばに来た。
「この子をあの男性のそばにいさせてやってはくれませんか?」
神父は、疲れて長いすに寝込んだ女に病床の毛布を掛けてやった。
「この子とあの男性が出会ったのも、天の父なる神様のお計らいだと思うのです。自分の愛する人と一緒にいることは、それだけで我々罪人を強くすることが、神様にはおできになります。かの男性も、この子がいるだけで励みになり、回復もより早くなると思いますが、いかがでしょうか?」
「神父さん。あたいは宗教に口を挟むつもりはないけど、神父さんも一緒に手伝ってくれると言うんなら、あたいは構わないよ。」
「もちろんですとも。わたくしも精一杯手伝わせていただきます。」
女と神父に男の介助の許可が出た。だが女は寝ている。
”女医は”は疲れていた。もう2,3日寝ていないのだ。
「介助は女と神父さんに任せて、先生も少しお休みになった方が・・・。」
カレシはいたって冷静だ。
「あたいもそうしたい。でもあたいが寝ている間に何かあったら、と思うと眠れないのよ。」
「医者じゃなくても、せめて看護婦の1人ぐらいいりゃあいいのにな。」
オトコはやはり勘が鋭い。
「先生。私、元看護師です。」
全員が振り返って専業主婦を見つめた。
「あんた、専業主婦でしょ?」
「ええ、今は専業主婦ですが、私はこの医科大学の附属看護専門学校を卒業しておりまして、結婚する前まではこの病院の外来看護師をしていました。ですからお産もこの病院でって、決めていたんです。」
「失礼だけど、旦那さんとはどこで知り合ったの?」
「主人はこの病院の医事課の職員です。私は外来担当でしたので、仕事中は主人とよく連絡を取り合っておりました。」
神父は顔をほころばせた。
「ほほう。これもまた神様のお計らいですな。」
「分かったわ。じゃああたいがカルテを書くから、後は任せる。頼むわね。」
「じゃあみんな、後は神父さんと看護婦さんに任せて休もう。明日はもっと忙しくなる。」
カレシが皆に休憩を促した。
職業柄か性癖か、オトコと女1は早速ベッドメイキングにとりかかった。
皆眠り込んだ。神父と看護師と、女2を除いて。
「神父。あたしを覚えてる?」
「”深夜ミサ”によくお越し下さっていたご婦人ですな。覚えております。」
「『神父はエイズに感染している』という噂は本当だったのね。」
「哀れんで下さい。神にお仕えするわたくしもまた、罪深き人の子です。」
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