ふと、目が覚めた。
ぐるりとあたりを見回してみれば、目に入ってきたのは見覚えがない風景。だが、黒板や教卓、ずらりと並んだ椅子と机を見る限りここはどこかの学校の教室なのだろうか。
ようやく覚めてきた頭をフル回転させて考えてみるも、どうしても自分がなぜこんなところにいるのか思い出せない。──もしかして、誘拐?そう脳が認識した途端ぞわりと全身に悪寒が走り、ようやく自分が置かれた状況が危険だと理解し脳内で警報が鳴り出す。
大変、大変。幸い見張りとかはいないみたいだし、早く逃げなくちゃ。
キーンコーンカーンコーン……
唐突になり始めた間抜けな、いや、むしろそれが不気味にさえ聞こえる学校のチャイム。びくりと肩を跳ねさせて全神経を集中させる。まさか、逃げようとしたのがバレた?そう思わず考えた瞬間、耳に飛び込んできたのは緊迫感のまるで無いのんびりとした声。
「やあやあ、みんな目が覚めた?これから入学式を始めるから、さっさと体育館に集まってね!」
みんな?まさか、自分以外にもこんな状況の人がいるのか?
自分がひとりじゃないとわかった途端、なんだか急に元気が出てきた。急いで体育館へ行かねば。
私は震える拳をぎゅっと握りしめ、教室の扉を開けて体育館へと走り出した。
──これから始まる、おぞましい学園生活が待ち受けてるだなんてつゆ知らず。