風人 2017-02-09 19:49:33 |
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ブレイズメス1990/海堂尊/講談社文庫
物語は前作『ブラックペアン1988』を経た世良雅志が国際学会のためにフランスに旅立ち飛行機の中から始まる。
彼には学会以外にも佐伯病院長よりある使いを頼まれていた。
それは“モンテカルロのエトワール”と称される天城雪彦なる者に手紙を渡すというものだがその手紙ひとつが東城医大にも彼にも波紋を呼ぶ。
結局は天城との賭けに勝った世良先生により天城先生は東城医大に招聘される。
フランス現地で天城先生の手術を目の当たりにした世良雅志は彼の腕を知り理解してるが高階先生たちは彼の存在ややり方をよしとしない。
また彼は心臓手術と患者の財産を天秤にするやり方が賭けではないが患者もまた手術に自分に生命を賭けているのだと持論をいう。
スリジエハートセンターなる自分の居場所や職場のために天城先生、彼もまた戦っているのだ。
だが理解者は世良雅志とフランスで知り合った駒井くらいであった。
公開手術を成功させなんとか順風満帆にいたるかに見えたが高階先生は彼に明確な敵意を示す。
手術ではない。これはサーカスだと。
物語はスリジエセンターへの構築への希望を書きながら東城医大ひいては日本の医療体制への戦いを示す天城先生の孤独を記して終わる。
本作品の冒頭はフランスでありその雰囲気はどこか『ルバン三世』にも似ており一章二章における天城雪彦のキャラは鮮烈かつ印象に残る。
また患者の生命財産と賭け事を天秤にかけるかのような天城先生の持論がことごとく高階先生をはじめとする当時の東城医大の未来を担うであろう先生方を論破してゆく。
もちろん正しいか否かは疑問の余地もあるが。
たが作品中において天城雪彦の人物像は世良先生を筆頭に敵味方違わずに各人物に影響してゆく。
その中には『バチスタ』の桐生恭一の若き姿、『ナニワ・モンスター』の秘書時代の村雨府知事などである。
天城雪彦の人物像こそ本作品の魅力であるといっても過言でないかも知れない。
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